「人間が運転する自動車に保険をかけるのとは、意味がまったく異なります。今日のモビリティ保険はドライバーにかけていますが、自律走行システムに移行すればOEM(完成車メーカー)に保険をかける必要が出てきます。ドライバーではなく、オペレーターがコントロールするからです。つまり、モビリティをめぐる保険のありかたが大きく変わるのです」
事業内容もさることながら、フォーテリックスが、出資者や提携パートナーの期待を集める理由はほかにもいくつかある。まず、先発者としての市場での優位性が挙げられる。ビンヤミニをはじめ、CTO(最高技術責任者)のヨアヴ・ホランダーや、CRAO(最高規制関連業務責任者)のギル・アミドら同社の共同創業者たちは、米半導体大手インテルや半導体スタートアップで長いこと働いていた。彼らがマイクロチップの検証・妥当性確認のために開発した手法は、世界の半導体業界で標準として広く使われている。そのノウハウを自律運転システム市場に応用しており、自動車メーカーがもっていない技術や専門知識が、フォーテリックスを優位にしているのだ。
次に、その高い専門性により業界規格を打ち立てられた点だ。フォーテリックスの共同創業者たちは半導体スタートアップ在籍時、自社の経営戦略が業界規格に受ける影響の大きさを痛感したという。業界規格で後れを取るかたちとなり、期待していたような成功を収められなかったのだ。つまり、業界規格と、自社戦略の方向性が異なる場合、業界の中で競争するのが非常に難しくなる。