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2023.12.06 13:30

テスラの保険部門に過大請求の疑い カリフォルニア州で集団訴訟

日下部博一

Shutterstock.com

カリフォルニア州の判事は、テスラの保険部門に対する集団訴訟の前進を認め、イーロン・マスクが経営する電気自動車メーカーは、また新たな訴訟に直面することになった。

イリノイ州のリッキー・スティーブンスと名乗る原告は、十数州のテスラのドライバーを代表して4月に訴訟を起こし、テスラの保険部門が、車両の「前方衝突警告システム」の欠陥に起因して、顧客に過大な保険料を請求したと主張している。

法廷文書によると、テスラの保険契約において、ドライバーは車両の前方衝突警告アラートを作動させる頻度など、リアルタイムの安全運転の習性に基づいて保険料を計算すると約束されていたと、スティーブンスは主張している。

しかし、この訴訟で原告は、テスラのドライバーの多くが前方衝突警告アラートの不具合を経験したり、運転中に前方衝突警告を作動させた経験がないにもかかわらず、警告が作動した履歴が安全報告に記載されていたと主張している。

こうした「誤った」警告がドライバーの安全性スコアに反映され、保険料の値上げにつながったとスティーブンスは主張している。

アラメダ郡高等裁判所のブラッド・セリグマン判事は米国時間12月4日、この訴訟の棄却を要求したテスラの申し立てを却下し、集団訴訟として裁判を進めることに同意した。フォーブスはテスラにコメントを求めている。

テスラが2019年に保険部門を立ち上げた際、マスクはテスラのドライバーに対し、他の従来の自動車保険会社よりも「圧倒的に優れた」サービスを約束した。ロイターの報道によると、この保険部門は、保険金の支払いや修理に長い待ち時間がかかったり、保険の請求担当者と連絡が取れないなどの不満を経験したと主張するドライバーからの反発に直面していた。

テスラが直面する複数の訴訟

今回の最新の法廷闘争は、今年に入ってからテスラが直面したいくつかの訴訟のひとつだ。8月には、3人のドライバーが、テスラが虚偽の航続距離を宣伝しているとして、同社に対して集団訴訟を起こした。テスラは11月に裁判所に提出した書類で、この訴訟を先行して報じたロイターの記事が「誤りだらけだ」と主張し、顧客の注文契約には同社と個別に仲裁することが義務付けられていると主張した。

また、4月には、テスラの元従業員がロイターに、テスラの社員が顧客の車載カメラに記録された映像にアクセスし、それを共有していると話したことから、ヘンリー・イェアと名乗るテスラ車のオーナーが、プライバシー権を侵害されたとして、テスラに対し集団訴訟を起こそうとした。しかし、テスラは、この訴えの棄却を要求する申し立ての中で、イェアの主張が匿名の情報源を引用したニュース記事を根拠としたものだと指摘。この訴訟で裁判所は10月に、テスラの仲裁強制の申し立てを認めた。

さらに裁判所は11月、顧客にテスラ認定のサービスセンターと部品の利用を義務付けることで、テスラがメンテナンスと部品の市場を独占していると主張する別の集団訴訟を棄却した。テスラは、原告側が反競争的行為を立証しておらず、同社のルールは連邦法に合致するものであり、他のEVメーカーと同様であると主張して、この訴訟の裁判官に対し棄却を求めていた。

テスラは裁判所への提出書類以外では、これらの訴訟に関して公的なコメントを出しておらず、2020年には広報部門を解体している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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