ビジネス

2024.05.25 09:15

マイクロソフト、グーグル、Uberで学んだ Figma山下祐樹CPO「私の働きかた」


──終わりの時間が迫っていますね。最後の一問はお好きな角度からお答えいただいて大丈夫です。お金や時間、人材などリソースが足りないという嘆きの声をよく聞きます。タスクに見合った人材を適材適所で配置するのは、特に、人材の流動性が高いシリコンバレーでは難しいように思えます。仮に適任者が見つかっても、日本とは異なり、数年後、場合によっては数カ月後には転職しているかもしれないわけですから。そうした人材リソース不足で悩むマネジメント職にはどのような助言をしますか?
 
山下:私が強く感じていることの一つに、先ほど話した、「すべての役割や境界線が曖昧になっている」点があります。Figmaでは、必ずしもデザイナーが、UXをデザインするとは限りません。デザイナーではなく、エンジニアやプロダクト・マネジャーがデザインする時もあります。重要なのは、最高のUXを生み出すために協力し合うことです。
 
私はまず自分のチームを見て、「何をしなければいけないか。何がいちばん重要か。チームはそれに取り組めているか」を考えます。できていない場合は、最も重要なことに集中できるよう、チームをヘルプします。肩書きや学歴で自分の仕事を決めつけない文化をどう育むか。大事なのは、成長マインドセットをもつことです。マイクロソフトで学んだことに似ています。まずは「チームに役立つことをしよう」と。その過程で専門性や才能が必要になることもあるでしょう。でも、大事なのは自分自身の限界を超える方法を探し続けることです。
 
自分のキャリアを通じて、そのさまざまなマネジメントを学んだと思います。マイクロソフトでは、「サーバント・リーダーシップ」でした。エンジニアがコーヒーを飲みたいと言えば、それを買いに行くわけです(笑)。Uberでは、CEOのトラビス・カラニックが「ハッスルする(Hustle)」ことについてよく話していました。どういうことかというと、彼は「弁護士やデータサイエンティストがいなかったから、わからなかった」という“言い訳”だけは絶対に聞きたくありませんでした。そう答えると、決まって「それで君は何をしたんだ?」と言われたものです。
 
ある時、トラビスに「弁護士は『こんなのは無理だ』と言っていましたよ」と伝えたら、「それなら君は契約書に目を通したのか?」と言われました。「今の段階では弁護士がなんて言うかは関係ない。君がすべき仕事だろう?」と。そうした経験もあって、物事を柔軟に考えられるようになりましたね。結局のところ、仕事とはそういうものなのではないでしょうか。常に、皆でお互いの仕事のやり方を学んでいるのだと思います。

文=井関庸介

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