ビジネス

2024.05.25 09:15

マイクロソフト、グーグル、Uberで学んだ Figma山下祐樹CPO「私の働きかた」


そうした従来のCPOが求められている責務に加え、FigmaのCPOには、“チーフ・ストーリーテラー(Chief Storyteller)”であることも重要な役割の一つであると私は考えています。社内での役割で言えば、社員の考えを目標に向けてそろえるための“ストーリー(物語)”が必要です。グーグル在籍時の話と一緒で、物理的に業務の細部にまで立ち入ることはできません。だからこそ、全員が同じストーリーを共有し、それに刺激を受けているかを確認したいのです。そうすることで、皆を結集させ、「私たちはいま何をしていて、なぜそれをしているのか?」を把握することができます。

もっとも、製品を買ってくださるのはお客さまですから、社外向けのストーリーも同じくらい重要です。顧客は製品の機能だけではなく、Figmaのビジョンも信じてくれているわけですから。特に私たちの初期からのお客さまの多くは、自社に必要なものがいくつか欠けていると知っていたにもかかわらず、Figmaのビジョンや、仕事のしかた、企業哲学に共感してくれていたから、製品を買ってくれたのです。私の仕事はそうした社内外の“ストーリー”にもとづいて製品を作る手助けをすることだと考えています。
 「チーフ・ストーリーテラー(Chief Storyteller)」であることも、FigmaのCPOの重要な役割と語る山下祐樹 Ramsey Cardy / Sportsfile / Web Summit / Getty Images

「チーフ・ストーリーテラー(Chief Storyteller)」であることも、FigmaのCPOの重要な役割と語る山下祐樹 Ramsey Cardy / Sportsfile / Web Summit / Getty Images

──山下さんについてはEO(@entrepreneurship_opportunities)が素晴らしいインタビューをYouTubeで公開・配信しています。ぜひ読者諸賢にも見てほしいのですが、そこで山下さんは「仕事の役割や境界線が曖昧になってきているのではないか」というようなことをお話しされています。かつては、仕事や職業の間に線引きがあったのが、曖昧になってきているか、あるいは融合しつつある、と。

デザインに関しては、あらゆる仕事に何かしら接点があるという特異な性質から、またデザイン思考への理解が深まってきている点からも合理的に思えますが、これはデザイン以外の仕事でも起こり得るとお考えでしょうか?
 
山下:デザイン思考への理解が高まっているのは確かです。デザインの価値がいっそう理解されるようになり、それに伴ってかかわりたいと思う人も増えています。これは日本の企業を含め、私たちが一緒に仕事をしている各国の企業を見ても感じます。当初、私たちの顧客は米テクノロジー企業が中心でしたが、さまざまな業界や市場を見るにつれ、いわゆる“伝統的な大手企業”では、今も製造やデザインが外注されているのを目の当たりにしました。代理店がアイデアを出し、デザインのやりとりが続くというものです。今は、社内でデザインをする企業が増えています。「差別化できる体験」「勝てる体験」としてのデザインの価値を理解しているからです。そういう観点から見ると、デザインは、より多くの人が深くかかわりたくなる点でユニークだと思います。
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文=井関庸介

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