━━あなたは早くから、この種の集団安全保障の重要性を訴えてきたと思います。そして、フランスのエマニュエル・マクロン大統領に見られるように、立ち上がらなければならないという危機感を行動に移す人がようやく出てきました。欧州は今、重要な転換点を迎えているのでしょうか。
ラスムセン:まさに、決定的な瞬間に立ち会っています。最近、マクロン大統領がフランスの核能力を欧州に配備する選択肢に関心を示しました。これこそ地殻変動ですよ。数年前には考えられなかったことですから。しかしマクロン大統領は今、欧州はもはや自分たちを守れるのは自分たちだけだと認識しています。そして、欧州にはフランスと英国の2つの核保有国があります。私は、英国とフランスが欧州と協力し、核兵器をロシアに対する抑止力の一部として使用できるようにすると予測しています。
━━少し話を戻し、米国の外交姿勢についてお尋ねしたいと思います。米国は歴史的に、国際協調主義と孤立主義を繰り返してきました。今回の外交方針も性質的には再調整に近いもので、過去のパターンに従っているのでしょうか。またこうした政治的な混乱には、米国によるヘゲモニー(覇権主義)に衰退の兆しが表れているのでしょうか?
ラスムセン:興味深い考えですね。ただ、「アメリカ第一主義」が昔からある考えだという点は重要です。トランプ大統領が初めてではありません。第一次世界大戦前夜には、米国第一主義が活発化しています。最終的に、米国は、破局を避けるために第一次世界大戦に参戦しなければならないことを悟りました。また第一次世界大戦後と第二次世界大戦前、二つの戦争の間でも、米国では米国第一主義が拡大していました。
彼らは実際に「America First Committee(米国第一主義委員会)」を設立しています(編集部註:1940年設立の米圧力団体。米国の第二次世界大戦への参戦に反対し、孤立主義を主張した)。この委員会は1941年に日本が真珠湾を攻撃したとき、活動を停止しました。そして第二次世界大戦後、ハリー・トルーマン大統領は、教訓を学ばなければならない、米国第一主義は機能しないと悟りました。だからこそ彼は、多国間機関と国際法にもとづく新しい世界秩序を確立したのです。
それらすべてが米国によって監督されていました。そして、ジョージ・W・ブッシュまでのすべての歴代大統領は、党派に関係なく、民主党と共和党の両方がその世界法を支持し、その原則を遵守したと言えるでしょう。ところがバラク・オバマ大統領は、米国の世界的なリーダーシップの価値を疑い始めたのです。
そしてトランプ大統領が現れたことにより、米国第一主義のイデオロギーが復活しました。なので、行ったり来たりしていると言えるでしょう。まず米国第一運動があり、その後、米国民はこれが悪い戦略だと気づき、協調主義へ移行しています。そこで問題は、「今回は一時的な米国第一運動なのか?」ということです。私には、4年で終わるように思えません。おそらく、欧州は自立する必要があるという教訓を学ぶことになると思います。米国のアジアの同盟国も同じ教訓を学ぶことになるのではないでしょうか。