━━政府や議会の仕組みと内情を理解したので、今度は準備ができているということですね。
ラスムセン:ええ、十分に準備ができています。ですから、我々は今、地震につながるかもしれないペースで起きている地殻変動を目の当たりにしているのです。私は現状についてそう考えています。だからこそ、欧州は立ち上がらなければなりません。自立しなければいけないのです。支援が必要になっても、米国からの自動的な支援を当てにすることはできません。同じことが、日本といった米国の同盟国やパートナーにも当てはまると思います。
トランプ大統領は「Transactionalist(取引至上主義者)」です。自由や民主主義といった諸原則を気にかけているかもしれませんが、彼にとって中国やロシアのような大国と交渉をするほうがより重要なのです。今日の世界は、強力な国々がより小さく弱い国々を差し置いて決定を下すような「New World Order(新しい世界秩序)」に近づいているのかもしれません。つまり、ワシントン、北京、モスクワの3つの権力中枢が世界を分割するでしょう。我々はその新しい世界秩序に対抗しなければなりません。
━━その新しい世界秩序に対抗するには、例えばNATO加盟国が多い欧州はどうすればいいのでしょうか?
ラスムセン: 欧州が、欧州自身にもっと投資することです。欧州はこれまでずっと、その豊かな生活を旧態依然とした仕組みに依存してきました。ロシアからの安いエネルギー、中国からの安いモノ、米国からの安い安全保障です。それはもはや機能していません。私たちは自分たちの安全保障にもっと投資しなければなりません。そのためにも防衛投資を倍増させるべきだと思います。
NATOは、すべての同盟国がGDPの少なくとも2%を防衛に投資すべき、という目標を掲げています。私はそれをGDPの4%に倍増させるべきだと考えています。具体的には、将来のロシアの攻撃からウクライナを守る安全保障として、ウクライナに平和維持活動を展開することを提案すべきです。それが欧州にできる現状の対応でしょう。