CDSは「第41諸兵科連合軍は、ポクロウシクを西から翼側迂回して(西方に位置するドニプロペトロウシク州の都市)パウロフラードにつながる道路を遮断するという主目的を達成するために、北および北西への攻勢を継続することができなくなっている」とも指摘している。
行き詰まったロシア軍は、ほかの目標に軸足を移している。CDSによると、戦域のロシア軍司令部は主な注意をポクロウシク方面でなく、ポクロウシクの南西のノボパウリウカ方面と北東のトレツク方面に向けている。司令部は第41諸兵科連合軍の最も強力な部隊である第90親衛戦車師団を、ポクロウシク方面から南のアンドリーウカ村のほうへ移動させた。ノボパウリウカ方面に含まれるアンドリーウカでは、ロシア軍の2個連隊が「戦術的成功」を収めている。
ロシア軍の主要な攻勢のひとつが勢いを失っていることは、言うまでもなくロシアの戦争努力にとって喜ばしいニュースではない。ロシア側にとって明るい材料があるとすれば、ロシア軍の指揮官たちが状況の変化に適応する意思と能力を示していることだろう。
戦争が続き、それを取り巻く政治情勢が変化するなかで、適応は双方にとって重要になっている。米国は、ジョー・バイデン前大統領のもとではウクライナにとって最も信頼できる支援国のひとつだったが、ドナルド・トランプ大統領による無秩序な指導によって急速にロシアに接近している。
トランプはウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領に最大5000億ドル(約75兆円)相当の鉱物権益の供与を迫っている。ゼレンスキーにそれを拒まれると、トランプ政権は衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」へのウクライナのアクセスを遮断すると脅した。ウクライナ軍の多くの部隊はスターリンクを相互の連絡や、それと同じくらい重要なドローンとの通信に用いている。
スターリンクは米スペースX社が運営しており、スペースXは右派のビリオネアであるイーロン・マスクが支配権を握っている。2024年の米大統領選でトランプに巨額の献金をしたマスクは現在、超法規的な「効率化」組織を率い、数万人の連邦職員を無計画に解雇し、米国の連邦政府機関全体を内側から破壊している。