火星探査車の地上管制チームは、めったなことでは驚かない。古代の砂浜の跡から太古の生命の存在を示唆するかもしれない岩石まで、ありとあらゆるものを目にしてきたからだ。NASAの火星探査車パーシビアランスが、ジェゼロクレーターの縁で一風変わった岩石を発見した。泡の塊のように見える奇妙な形態が、周囲から目立っている。3月21日付の探査車関連の最新ニュースで、英インペリアル・カレッジ・ロンドン博士研究員のアレックス・ジョーンズは「パーシビアランスの科学チームは先週、何百ものミリサイズの球体でできた奇妙な岩石に度肝を抜かれた」と伝えている。
パーシビアランスは、ウィッチ・ヘーゼル・ヒルと呼ばれる領域の斜面の下方にあるブルームポイントと呼ばれる地点を探索している。ジェゼロクレーターに最初に着陸したのは2021年初めのことだ。2024年末にはジェゼロクレーターの縁を登る壮大な旅を終え、現在は火星の新たな領域の調査を進めている。この場所で「驚くべき球状粒子(スフェルール)」を含む岩石を見つけたのだ。
火星の岩石中の球体粒子
科学チームはこの岩石を「セント・ポールズ・ベイ(St. Pauls Bay)」と命名した。岩石の画像を見ると、スフェルールの中に特異な形状のものがあることがわかる。角張ったものや楕円形のもの、小さな穴が開いているものもある。「地質学のどんな気まぐれによって、このような奇妙な形になったのだろうか」と、ジョーンズは問いかけている。

パーシビアランスは3月11日に、遠くからこの岩石を調査しただけでなく、スーパーカム(SuperCam)リモートマイクロイメージャー(RMI)機器を用いてクローズアップ画像も撮影した。この詳細な画像により、スフェルールの形状の多様性が浮き彫りにされている。
ジョーンズは、このような岩石の考えられる形成過程をいくつか示している。スフェルールは、水と岩石の細孔が相互作用するプロセスによって生成されるコンクリーションである可能性がある。だが、スフェルールについて考えられる説明はこれだけではない。ジョーンズは「また、地球上での形成過程としては、火山噴火でできた溶岩の液滴の急速な冷却や、隕石衝突で蒸発した岩石の凝結などが挙げられる」と指摘している。