オーストラリアのカーティン大学地球惑星科学部と西オーストラリア州地質調査所（GSWA）の研究者チームが、同州ピルバラ地区のまさに中心部に位置する地球最古の隕石衝突クレーターを発見したと発表した。このクレーターが形成されたのは約35億年前で、これまでの最古記録（南アフリカのフレデフォートドーム）を10億年以上さかのぼる、知られている中で最古となる。
学術系オンラインニュースメディアのThe Conversationに掲載された記事では、衝突起源を証明するために現地でどのようにして証拠を集めたかが説明されている。
ピルバラ地区には地球上で見つかる最古級の大陸地殻が存在しており、ピルバラ地塊（地質学的に安定した古い大陸地殻）の岩石は年代が約38億～27億年前となっている。
研究チームは「南極クリーク部層（Antarctic Creek Member）」として知られる特異な岩石層を分析した。この岩層は直径約20kmのドーム状隆起部の側面に露出している。オーストラリアのこの地域はこの大陸で最も暑い場所の1つで、ノースポール（北極）ドームというジョークのような名称で呼ばれている。南極クリーク部層は厚さが約20mしかなく、主に約34億7000万年前に堆積したチャートと火山砕屑岩で構成されている。
だが、この地層には衝突球粒（天体衝突時に巻き上げられる溶けた岩から形成される小球体）も含まれている。さらには、地質調査でシャッターコーンと呼ばれる破砕された岩石も見つかった。シャッターコーンは円錐形の構造体で、表面には枝分かれした多数の筋状模様がみられる。自然界では隕石衝突の衝撃波が岩盤を破砕した後にしか形成されない。
衝突球粒とシャッターコーンの分布と衝突の衝撃で盛り上がった中央丘（ドーム）の大きさに基づき、クレーター外縁の直径を約100kmと、論文では推定している。地球上で発見されている衝突クレーターの中では比較的大型のものだが、最大級というわけではない。
また論文によると、地球上で最古の大陸地殻の一部がどのようにして形成されたかを天体衝突で説明できるかもしれない。地球の外殻を形成する岩石は、地球のマントルと化学的性質が大きく異なり、約40億～30億年前に何がこの変化の引き金となったかは、地質学的にまだ解明されていない。
天体衝突によって膨大な量の物質が吹き飛ばされ、周囲の岩石が融解したことに伴い、下部のマントルによってより高温で低密度の火山性物質の厚い「塊」が生成され、これが上昇して後に大陸地殻になったと、研究チームは考えている。
今回の論文「A Paleoarchaean impact crater in the Pilbara Craton, Western Australia」は、学術誌Nature Communicationsに掲載された。
