3月16日、大西卓哉氏が乗る「クルー10」がISS(国際宇宙ステーション)に到着し、その3日後には先行チームの「クルー9」が地球に帰還した。こうしたクルーの交代はISS長期滞在がはじまった2000年以降、約6カ月おきに行われている。ただし今回は、大西氏の着任以外にもさまざまな問題がISSに集約されたことから、この定例行事がかつてなく注目されることになった。
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9カ月後の地球帰還

大西氏が参加する第72次長期滞在ミッションは、当初は2月開始が予定されていた。しかし、同ミッションで使用される予定だった新型クルードラゴン「C213」の開発が遅れたため、その打ち上げは3月下旬に変更された。ただしその遅延は、ISSに足止めされたままのブッチとスニの地球帰還がさらに遅れることを意味した。
NASA所属のブッチ・ウィルモアとスニ・ウィリアムズは、ボーイングの新型宇宙船「CST-100 スターライナー」によって2024年6月6日に打ち上げられた。しかし、同機におけるこの初の有人飛行テストで、機体からはヘリウムガスが漏洩し、複数のスラスター(姿勢制御装置)が動作しない事態が発生。ISSには無事ドッキングしたものの、NASAは安全が確認できないとして2人を同機で帰還させることを断念。スターライナーは無人のまま地表へ戻された。
無人のスターライナーがISSから切り離されたのは9月7日。その3週間後の9月29日には2人のシートを空けた後続のクルー9がISSに到着した。つまりこの3週間、ブッチとスニは自分たちの船がないままISSに滞在することになった。
近年、ISSにおけるデブリ(宇宙ゴミ)を避けるための衝突回避マヌーバ、つまり軌道を偏向するための操船が増えており、その頻度は年間3回から5回程度に増加している。その際、クルーは安全が確認できるまで自分たちの宇宙船に退去し、いつでもISSから離脱できるように備える。しかしこの3週間、ブッチとスニはその船を失ったことになる。
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ブッチとスニを早期帰還させる手段も検討されたが、結果的に2人はクルー9で到着したメンバー2名とともに、第71次、72次の長期滞在メンバーに編入された。この決定によって2人の帰還は2025年2月まで延長されることになった。