欧州

2024.04.15 10:00

滑空爆弾には滑空爆弾を ウクライナ軍、新型ドローンで防空兵器をたたき反撃へ布石

ロシア軍のブークM2自走式地対空ミサイルシステム。2010年7月、モスクワ州ジュコフスキーで(Degtyaryov Andrey / Shutterstock.com)

ウクライナ側はこれまで、前線では何十万機もの小型のFPVドローンによって、ロシア軍の戦車をはじめとする戦闘車両や、ゴルフカートのような無防備な車両を含む兵員輸送車両、歩兵などを付け回して攻撃してきた。また、より大型で高価な長距離ドローンを使って、前線から何百km、場合によっては1000kmほども離れたロシア領内の航空基地製油所工場にも打撃を与えてきた。そして新たにRam IIを投入し、これまで効果的に攻撃するすべがなかった防空エリアを徘徊させ始めた。
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Ram IIがロシア側の防空を十分に破壊できれば、ランセットがロシア空軍のためにしたのと同じことをウクライナ空軍のためにできるだろう。戦闘爆撃機が高高度で前線に向けて突進し、およそ40km先の目標に向けて精密な滑空爆弾を投下できるようにすることである(編集注:ロシア軍機は機体を引き起こして爆弾を投下する「トス爆撃」の機動を、最近の滑空爆弾攻撃では探知されにくい低高度からではなく、射程を伸ばせるように高高度で行っていると報告されている。この場合、射程は50〜60kmに達すると推定されている)。

ウクライナ側で「KAB」と呼ばれることもある滑空爆弾(編集注:汎用の航空爆弾であるFABにUMPKと呼ばれる衛星誘導キットを装着したもの。もともと翼や衛星誘導装置が付いた精密誘導爆弾のKABとは別)は、3年目に入ったこの戦争で決定的な兵器になっている。ロシア空軍はスホーイSu-34戦闘爆撃機などから500kgや1000kg、1500kgの滑空爆弾を1日に最大100発投下し、ウクライナ軍の陣地を壊滅させ、ロシア軍の地上部隊が進撃できるようにしている。

ウクライナの調査分析グループ、ディープステートは、滑空爆弾はロシアにとって「ミラクル兵器」になっていると評し、ウクライナ側の「対抗手段はほとんどない」と述べている。
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とはいえ、ウクライナ側に反撃する力がないわけではない。ウクライナ空軍は、無誘導弾をGPS(全地球測位システム)などで誘導できるようにする装置「JDAM」を米国から供与されている。JDAMを装着した滑空爆弾は、ロシア空軍が用いている滑空爆弾と同等以上の性能を持つ。

ウクライナ軍のJDAMの在庫は、米議会下院のロシアと友好的な共和党議員たちがウクライナへの追加支援を妨害し出してから、半年で底をついたかもしれない。一方で、ウクライナ空軍はフランス製の同様の装置「AASM」を月に50基受け取るようになっており、それを装着した滑空爆弾を搭載できるように、保有するミグやスホーイを改修している。

ロシア側が滑空爆弾を月に数千発落としているとすれば、フランスから供与されているAASMの数は多くない。だが、共和党が妥協して新たなウクライナ支援法案の採決を認めたあかつきには、射程を伸ばしたタイプの「JDAM-ER」がさらにウクライナに届くことになるだろう。そして、こちらの数は相当多くなる可能性がある。

そのころまでは、Ram IIはロシア軍の防空車両をもっと後方に押し下げ、ウクライナ軍機が滑空爆弾によって、ロシア軍機が現在行っているのと同じくらい容赦なくロシア側を攻撃するのに、より安全な空域が確保されているかもしれない。
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forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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