1. ロシアは政治、産業、軍事のリソースを総動員している。だがこの動員は、ロシアの再生不可能なリソースを著しく消耗している。なかでも重要なのは、冷戦時代の古い兵器の在庫が払底しつつあることだ。
つまり、ロシアは強いが脆い。
2. ウクライナもリソースを動員しているが、喫緊の財政的ニーズや軍事的ニーズを満たすのには依然として外国の援助に頼っている。そして、この援助の決定的に重要な部分は、米議会下院のロシアに好都合な共和党議員たちの手で阻まれている。
3. ウクライナの戦術はロシアの戦術より優れており、ウクライナ軍部隊がはるかに規模の大きいロシア軍部隊を打ち破る一因になっている。だが、ウクライナ軍の弾薬が欠乏している場合は、戦術自体が意味をなさなくなる。
およそ1000kmにわたる戦線の一見ちぐはぐに見える現在の状況は、これら3つのダイナミクスの相互作用によって説明できる。
ウクライナ軍はロシア軍による攻撃をおおむね撃退し、徐々に装備が貧弱になってきているその突撃部隊に途方もない損害を与えている。それでも、ロシア軍はたえず部隊を繰り出し、優勢に立っている。ロシア軍の進撃を止められるのは共和党のマイク・ジョンソン米下院議長だが、これまでそうするのを拒んでいる。
ジョンソンはただ、ウクライナに600億ドル(約9兆2000億円)規模の援助を送る法案を採決にかけるだけでいい。この法案は米国民から圧倒的に支持されている。この援助で新たな弾薬を入手できれば、ウクライナ軍はロシア軍の前進を押しとどめられるだろうし、その間にロシア軍は冷戦期の古い兵器の備蓄を使い果たすことになるだろう。
ロシア軍はウクライナ軍との2年2カ月あまりにおよぶ激しい戦いで、戦車、歩兵戦闘車、榴弾砲など各種装備を1万5300点あまり失った。人員も数十万人損耗した。ウクライナ軍の損害はその3分の1ほどにとどまっている。