欧州

2024.04.11

ロシア軍の「亀戦車」、すみかを突き止められ甲羅ごと粉砕される

ロシア軍のT-72B3戦車。2020年8月、モスクワ郊外アラビノの演習場で(Andrey Kryuchenko / Shutterstock.com)

ロシアの「亀戦車」にとってふさわしい最期だったと言うべきかもしれない。

亀の甲羅のような不格好な金属製の殻で身を守ってみたはいいものの、それに邪魔されて砲塔をろく回転できず、その重みで鈍足になっていたに違いない例の戦車のことだ。

ロシアに占領されているウクライナ東部ドネツク市のすぐ西に位置する都市、クラスノホリウカ周辺の前線に登場してからわずか1日かそこらで、この戦車はドネツク市のペトロウシキー地区の格納庫に隠れているところを、ウクライナ軍のドローン(無人機)チームに見つけられた。

ウクライナ軍はその後、この格納庫に砲撃を加えたとみられ、格納庫と、亀戦車を含め、中にあった複数の車両が破壊された


珍妙なDIY戦車の前線勤務はこうしてあっけなく終わった。ブラックコメディーのような話だが、戦場での安全確保に向けた即席の対応という点では軽視できない面もある。

また、亀戦車が短命で終わったのはロシアにとって悲劇だが、これひとつをとって、2年2カ月目になるこの戦争でのロシアの全般的な戦法がうまくいっていないと断じることはできない。その戦法は、ロシア軍の人員と装備に多大な損害を出しながらも、むしろ功を奏しているとすら言える。

亀戦車に話を戻すと、その正体はどうやらT-72戦車(重量51t、乗員3人)の初期型に、自作のドローン対策用装甲を追加したものだったようだ。

この戦争ではロシア軍もウクライナ軍も、戦車をはじめとする車両をドローンから防護するため、ケージ(鳥かご)型やスラット(格子)状の追加装甲を施すことが多くなっている。この戦車の場合は、戦車の前部も隠れるほどの巨大なルーフ(屋根)型の装甲を付け足していた。

だが、ルーフを支える突っ張りのため砲塔はごくわずかしか回転できず、おそらく森林地帯や市街地での機動にも支障が出ていただろう。さらに問題なのは、甲羅のように覆う装甲と車体との間に隙間があったことだ。その隙間は、ウクライナ軍が大量に運用している小さな自爆型ドローンの一機が入り込むのに十分な広さだった。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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