核戦争に対応した指揮偵察車なら何でもよいというわけではなかった。考えられる限り、最高の防護力と快適性を兼ね備えることが求められた。密閉され、自己完結型で、厚い装甲を備え、砲塔のない戦車の車体に、無限軌道(キャタピラ)を履き、遠隔カメラや専用の酸素供給装置を搭載する、といった仕様だ。
こうして誕生したのが「ラドガ」指揮幕僚車である。生産数はごくわずかで、4〜5両ほどだったかもしれない。うち1両は、1986年にウクライナ北部のチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所がメルトダウン(炉心溶融)事故を起こしたあと、周辺の放射性物質下降エリアに投入された。その後は、博物館に所蔵された別の1両を除くと、ラドガは姿を消していた。
ところが今週、ウクライナ東部のクレミンナの森近くで、ラドガらしい車両がウクライナ側の防御線に向けて突っ込んでくるのを、ウクライナ軍のドローン(無人機)が見つけた。続いてラドガは同じドローンの体当たり攻撃を食らった。
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— Andrew Perpetua (@AndrewPerpetua) March 26, 2024
ロシアがウクライナで拡大して25カ月あまりたつ戦争のおよそ1000kmにおよぶ戦線で、ロシア側の車両の損害は確認されているだけで1万5000両あまりにのぼり、その数はさらに増え続けている。そして、ロシアが新規生産や古い在庫の再利用によって損害を補うのに苦慮していることは、秘密でもなんでもない。
ロシア軍はウクライナの戦場で戦車を年に1300両、それ以外の戦闘車両を年に1700両のペースで失っている。それに対して、ロシアの戦車の新規生産量は年に500〜600両程度、それ以外の戦闘車両の新規生産量も年に1000両かそこらにとどまる。ウクライナの前線に時々、ロシア軍の非常に奇妙な車両が登場するのもこのギャップから説明できるだろう。ゴルフカートのような中国製車両はその最たるものだ。