欧州

2024.04.11 12:30

ロシア軍の「亀戦車」、すみかを突き止められ甲羅ごと粉砕される

それでも、亀戦車は8日のデビュー戦を乗り切った。冬から続けている攻勢の一環でロシア軍が進撃を試みているクラスノホリウカ近郊で、ウクライナ側の砲火などをくぐり抜けながら、歩兵を乗せた装甲車両の縦隊を先導した。

各車両から歩兵が下車したあと、亀戦車は引き返して格納庫に戻った。だが問題は、ウクライナ側のドローンがそれを監視していたことと、この戦車の画像がSNSで拡散したため世界中で冷やかされる存在になってしまったことだ。

SNSのユーザーたちは動画をあさり、格納庫に入っている亀戦車を映した動画(明らかにロシア兵が撮影したもの)を見つけ出した。ウクライナ側が亀戦車をそのすみかまで追跡し、その場所と昔の動画などの撮影場所を照合したうえで、その座標を砲兵部隊に伝えるのは造作のないことだった。

ロシア軍がこの戦争に登場した車両のなかでもとくに奇妙な車両をつくってしまったために、あまりに注目が集まりすぎた。その結果、亀戦車は居場所を特定され、攻撃を受けて残骸と化した。運用していた戦車兵たちも死傷したかもしれない。

とはいえ、お粗末なドローン対策をしたT-72が出現し、すぐに破壊されたからといって、ロシアがウクライナで負けつつある証拠だと誤解しないようにしよう。

ロシア経済は戦時体制に移行している。ロシアの指導者ウラジーミル・プーチンは先月、いかさま「選挙」で圧勝して大統領に再選された。ロシア軍はウクライナに対する侵略戦争を、少なくともさらに1年は継続できるほどの新兵や弾薬、冷戦時代の古い兵器を確保している。

そして、ロシア軍の戦法は機動よりも規模、つまり、弾薬が枯渇しているウクライナ軍を兵員や戦車の数で圧倒するというものになっている。ロシア軍はこうした戦い方で2月にウクライナ東部アウジーウカ市を攻略し、その後も少しずつ前進している。

ロシア軍はたしかに、こうした物量作戦で連日、兵士を何百人と犠牲にし、車両も何十両と失っている。今回の亀戦車もそうした一両ということになる。だが、ロシアの権力者たちがそうした人員や車両の損失を気にかけているようには見えない。おそらく、亀戦車の破壊も気に留めていないだろう。
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ドローン対策の究極版? 甲羅のように身を覆った「亀戦車」がロシア軍に出現

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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