大きな戦いが迫っている。その結果は、ロシアがウクライナで拡大して26カ月目に入る戦争の行く末に、重大な影響を与える可能性がある。
アウジーウカの場合は、ウクライナ軍の守備隊が撤退しても、必ずしも防御線が総崩れになったり、ロシア側にさらに深く突破されたりするわけではなかった。ところがチャシウヤールでは、仮にウクライナ側が退却を余儀なくされれば、ロシア軍が西へ一気に進撃する道が開かれてしまう。
「ウクライナ側がもしチャシウヤールの支配権を失えば、深刻な結果になりかねない。ロシア軍がドンバス(ドネツク州とルハンシク州)の主要都市に向けて前進する直接のルートが開けるからだ」。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトはそう解説している。
ロシア軍がここ数週間でチャシウヤールの東の端まで前進してきていることが、ウクライナとその支援諸国にとって非常に懸念される事態なのはそのためだ。他方、ウクライナ軍がチャシウヤール郊外の重要な交差点に戦車などの「罠」を設けたことが、ウクライナとその支援諸国にとって非常に期待のもてる動きなのも、同じ理由からだ。
この罠は、ロシア軍の部隊がすでに占拠しているイバニウシケ村の前進基地から出撃していく際に、隘路となる場所にまたがって張られている。隘路というのは、イバニウシケ村の西から森を抜けて、チャシウヤール南部につながるT-0504道路の途中にある、小さな橋のことだ。
もしロシア側の部隊、おそらく、バフムートに配置されている第11独立親衛空挺旅団の部隊がこの橋を越えれば、森の中に姿をくらまし、ウクライナ側のドローン(無人機)や大砲からある程度隠れながら、チャシウヤールに忍び寄ることができるかもしれない。
一方、ウクライナ側の部隊、具体的には第42、第67両独立機械化旅団と近傍の部隊がこの橋に対して十分な火力を集中できれば、ロシア軍部隊を木々に紛れる前の段階でつぶし、チャシウヤール南部への攻撃を阻めるかもしれない。
これまでのところは、ウクライナ側が成功している。言い換えれば、ロシア側は失敗している。10日、ウクライナ軍の対戦車ミサイル要員かドローン操縦士、砲兵、あるいは連携したこれら3者が、橋を渡ろうとしていたロシア軍部隊のBMP歩兵戦闘車少なくとも1両を攻撃した。
BMPは大破し、現場には残骸が残された。戦車などの罠が仕掛けられている一帯にはほかにも、以前に撃破されたロシア側の車両数両が焼け焦げた状態で転がっている。