欧州

2024.04.05

ウクライナ国産の安価な軽量機が長距離ドローンに変身 ロシア領内への攻撃は続く

アエロプラクトA-22超軽量機。2011年6月、ウクライナ中部ジトーミルで(dragunov / Shutterstock.com)

ウクライナ当局はロシアの戦略産業に対するこれまでで最も遠距離の攻撃のひとつを実行するため、国産の超軽量スポーツ航空機を入手し、有人制御用の機器をロボット制御用の機器に換装し、爆薬を詰め込んだ。

そして2日、このドローン(無人機)をウクライナとの国境から1000km以上離れたロシア西部エラブガにある経済特区まで飛行させ、敷地内の施設に突っ込ませた。緊急対応時の様子を撮影した映像から、このドローンが「アエロプラクトA-22」をベースにしたものであることが判明した。ウクライナのアエロプラクト社が手がけるA-22は、高翼、プロペラ1つ、座席2つの超軽量機だ。

イランで設計された自爆型ドローン「シャヘド」の組み立て工場を狙ったとされる今回の攻撃には、A-22の改造ドローンが2機投入された可能性がある。シャヘドの工場か付近の従業員寮を損傷させ、14人が負傷したと伝えられる。

ウクライナがA-22を自爆型ドローンに改造できたという事実からは、このタイプのドローンによる攻撃が今回で終わりではないことが強く示唆される。

シンプルで、信頼性が高く、警戒心を抱かれにくいA-22は、ドローンへの改造に向いている。それと同じくらい重要なのは、A-22がウクライナ製であることと、1機9万ドル(約1360万円)と手頃な価格であることだ。

9万ドルというのは、ウクライナ軍の兵士が1日100発単位で発射している米国製の携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」1発よりも若干高い程度だ。それでいて、A-22の改造ドローンはおそらく数百kgの爆薬を積んで、ロシア領内を1000km飛行し、高い精度で目標に到達できる。

A-22の改造ドローンは必要に応じて生産を増やすこともできそうだ。ウクライナの調査分析グループであるコンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)は今回の攻撃を分析したうえで、「(シャヘドの工場を狙った)攻撃は今後も試みられるだろう」と予想している

A-22は、中産階級のアマチュアパイロットが趣味で地元の空港上空周辺を遊覧飛行するために買うような飛行機だ。「扱いやすく、すばらしい短距離性能を誇り、95ノット(時速約176km)以上で巡航でき、荷物も(合法的に)十分積める、丈夫な飛行機をお探しの方は、ぴったりの場所にいらっしゃいました」。米国でA-22を取り扱うレイナー・エアクラフト社はウェブサイトでそう謳い、価格が9万ドル未満という点も強調している。

ウクライナがA-22をどのようにしてキラードローンに改造したのか、正確なところは不明だが、推測するのは難しくない。2019年、米空軍が1968年製の古い軽飛行機「セスナ206」の座席と操縦桿を取り外し、代わりにコンピューターで動かすサーボ(制御機器)一式を取り付けたことを思い出そう。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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