宇宙

2023.09.01 13:00

震災の教訓を胸に。人工衛星による救助支援と災害に強い社会づくり【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#23】

災害対応から災害を起こさない社会づくりへ

せりか:システムデザイン・マネジメントの観点から、災害に強い社会システムを作るために必要なものは何だと考えますか?

白坂教授:本来は、災害が起こりにくい社会がいいんです。もしかすると、自然災害を起こりやすくしてしまっている原因が、私たちにあるかもしれないわけです。私たちは今、災害が起きたときにいかに対応しやすくするかを考えていますが、そもそもなぜこれだけ多くの災害が起きるのかという問題には、まだ立ち向かえていないのです。

災害が発生する原因を追及するにはデータが必要ですし、何が起きているのかを解析する必要もあります。私たちは地球環境に対して、何をやって良くて、何をやってはいけないのか、「プラネタリーバウンダリー」を見つけ出していく必要があると考えています。ただ、それを見つけ出し、対策を打つまでは災害が起きてしまうので、まず、災害が起きたときの人命救助に手を打っているところです。

そして今、私が気になっているのは、プラネタリーバウンダリーの月版をどうするかということです。地球環境がここまで悪化して初めて、私たちはプラネタリーバウンダリーを意識し始めました。月のバウンダリーは、これから私たちが壊していくわけですよね。
(C)小山宙哉/講談社

(C)小山宙哉/講談社

月に洪水はないかもしれませんが、未知の災害が起こる可能性もあります。将来、月面に人類が住み始めたときに、災害対策をやらないといけなくなる日が来るかもしれません。地球ではもう自然災害が多発していますが、人類の活動が地球環境の悪化を招いているのであれば、月面では同じことを繰り返さないように、あらかじめ月のプラネタリーバウンダリーを考えておくことも重要です。
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協力=井上榛香

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