白坂教授:地球の環境システムをはじめ、今はまだわかっていないことが多くあります。答えがわかっている問いが与えられて、それをいかに効率的に解けるかという学校教育を多くの方が受けてこられたと思います。でも、もうその時代は終わっているんです。何をやるべきかを見つける人材を、育成すべきです。
また専門性が狭い分野だけに閉じてしまったら駄目なのですが、だからといって専門家がいらないわけではなく、「専門家を束ねる専門性」を持った人材が必要になってきています。弊研究科が育成しているのは、まさにそんな人材です。最近は、小中学生向けのアントレプレナーシップ教育が、推奨され始めていますよね。
日本は社会人教育が弱い国です。世界的に見て大学進学率は高いのに、修士号取得率と博士号取得率は先進国のなかでもかなり低いです。これは大学の学部レベルで学びが止まっているということなんですよ。研修を受けられる企業もあるかもしれませんが、その多くは業務効率化のためのものです。これだけ社会環境の変化が激しく、人生100年時代と言われるなか、学部卒業時の知識で残りの80年間をカバーするのは難しいですよね。だからこそ日本は社会として、働きながら学べる時代を作っていかないと。だって世界はみんな学んでいるんですから。
それから、新しい視点は専門性の外にあるにも関わらず、専門家は自分の専門性の中でしか考えが及びません。では、どうすれば外に出ていけるのかというと、やはり多様性を活かすことが大切です。とはいえ、ただ異分野の人材が集まるコミュニティがあるだけでは駄目なんですよね。上手く相互作用が生まれる仕組みを、システムデザイン・マネジメント研究科では研究しています。多様性のあるコミュニティが機能するメカニズムを用意してあげると、今までにはない考えが生まれる可能性が高まります。
せりか:地球規模の社会課題の解決には、教育環境の改革と専門性の壁を超えて多様な人材が議論できる仕組みづくりが大切だということですね。白坂先生、ありがとうございました!
関東大震災の発生から100年を迎える今月は、せりか宇宙飛行士と慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の白坂成功教授の対談をお届けしました。災害に強い社会づくりのために何ができるのか、この機会にぜひ考えてみてはいかがでしょうか。