宇宙

2023.08.29

海王星に新たな巨大「暗斑」 地上望遠鏡で初めて発見

欧州南天文台(ESO)の巨大望遠鏡VLTに搭載のMUSE分光器で観測した海王星の「天然色」画像。右上に暗斑が見える(ESO/P. Irwin et al.)

チリの山岳地帯から観測を行っている天文学者チームが、太陽系第8惑星の海王星の大気中に「暗斑(あんはん)」と呼ばれる巨大な暗色の斑点模様があるのを確認した。さらに予想外の発見として、その横により小型で明るい斑点も見つかった。

観測は欧州南天文台(ESO)の巨大望遠鏡VLTを用いて行われた。海王星の暗斑が地上の望遠鏡を使って観測されたのは初めてで、この発見に天文学者らは当惑している。

海王星のメタンを含む大気がどのように機能しているかを、遠方から解き明かそうとしている科学者らは、謎の解明に一歩前進した。34年前、米航空宇宙局(NASA)の探査機ボイジャー2号から地球に送信された観測史上初の海王星のクローズアップ画像には、大気の上層にある(メタンの氷でできた)明るく白い巻雲(筋状の雲)だけでなく、暗斑も写っていた。この暗斑は数年後に消失。2018年にはハッブル宇宙望遠鏡の観測で、海王星の北半球にある暗斑が確認された。

神出鬼没な暗斑

今回の発見に関する論文は、学術誌ネイチャー・アストロノミーに24日付けで掲載された。筆頭執筆者で、英オックスフォード大学教授のパトリック・アーウィンは「暗斑の最初の発見以来、現れてはすぐに消えていく、神出鬼没なこの暗色の特徴は一体何なのだろうと、私はいつも疑問に思っていた」と話す。「暗斑を地上から初めて検出できたことに、本当に興奮している」

アーウィンらのチームは、暗斑が発生する原因について、海王星の大気中で氷と靄(もや)が混ざり合う中、表面下の層で粒子状物質が黒化することにあると考えている。

史上初の「反射スペクトル」

この結論を導き出せたのは、海王星の暗斑から初めて、VLTを用いて3次元の反射スペクトルを得られたからだ。暗斑から反射された太陽光を構成色に分解することで、海王星の大気中のどこに暗斑が位置しているかや、どのような化学物質で構成されているかを、より容易に突き止めることができた。

欧州南天文台(ESO)の巨大望遠鏡VLTに搭載のMUSE分光器で観測した海王星。反射光を波長(構成色)に分解し、左から848nm(赤)、831 nm(緑)、551nm(青)、天然色(全色)を示す。短波長(青)画像の右上に暗斑が顕著に見える。831 nm(緑)画像は、暗斑のすぐそばにある深層の明るい雲を小さな白点として捉えている(ESO/P. Irwin et al.)

欧州南天文台(ESO)の巨大望遠鏡VLTに搭載のMUSE分光器で観測した海王星。反射光を波長(構成色)に分解、左から848nm(赤)、831 nm(緑)、551nm(青)、天然色(全色)を示す。短波長(青)画像の右上に暗斑が顕著に見える。831 nm(緑)画像には、暗斑のすぐそばにある深層の明るい雲を小さな白点として捉えている(ESO/P. Irwin et al.)


論文の共同執筆者で、米カリフォルニア大学バークレー校の研究者のマイケル・ウォンは「今回の観測の過程で、深層にある珍しい明るい雲のタイプを発見した。このような雲は、宇宙からですら、これまでに一度も特定されたことがなかった」と話す。明るい雲は、暗斑のすぐ近くに現れていた。

今回の発見が発表される数日前には、海王星の雲が四季(それぞれの季節の長さは41年間)ではなく、太陽の11年の活動周期に関連していることが、ハッブル宇宙望遠鏡の観測で明らかになっていた
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翻訳=河原稔

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