科学技術の進歩により宇宙開発は新たなステージへ
せりか:宇宙資源の研究が世間から受け入れられるようになってきたのはなぜだと思いますか?
宮本先生:やはり地球人の持っている科学技術のレベルが十分に熟してきたからだと思います。アポロ計画時代に人が月面に行きました。それから人は行っておらず、宇宙探査が停滞している時間が非常に長かったと考える人もいるわけですが、私は間違っていると思います。
アポロ計画時代は少し無理してでも人を月面に送って、こういうことができるんだというデモンストレーションが重要と考えた側面があります。その意味ではアポロ計画は大きな成功をおさめました。
当時はコンピューターの性能も悪かったですし、デジカメもありませんでした。天体の探査機って、スマホと少しにているのです。カメラとセンサが付いていて、通信もできる。昔はスマホと同じような機能を作ろうとしたら、一部屋分くらいの大きさの機械が必要でした。
宇宙機も同じように技術の進歩がありました。もちろん物理的な原理は変わっていないので、地球の重力を振り切って何かを宇宙へ運ぶのが非常に難しいことに変わりはありません。ただ、宇宙機の小型化が進み、宇宙へ運ぶエネルギー自体も小さく済むようになりました。世界では小惑星探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」の成功がハイライトされていますが、中国やインドも独自のミッションを成功させています。この背景にあるのは、地球人の技術のレベルがいい具合に成熟してきた。もうこれに尽きるんじゃないかと思うんです。
迫り来る、宇宙資源に頼らざるを得なくなる時代
せりか:改めての質問になりますが、宇宙資源を探査および開発する意義はどこにあると考えていらっしゃいますか?宮本先生:アメリカ大陸の開拓に例えて説明しましょう。開拓開始当初の人々は、ヨーロッパから全ての生活用品をアメリカに持ち込んで、足りなくなればヨーロッパに取りに帰る。今までの宇宙開発はこれだったと思います。地球から全てのものを持ち込んで、探査する。
しかし西部開拓時代になると、現地のものを使うようになっていきます。ヨーロッパからものを持って来なくても、バッファローを狩って、皮から服やベルトを作るようになりました。そして、物資を補給しなくても、どんどん西に進むことができました。これと同じことが宇宙でも起きるはずです。地球外でいかに有用なものを手に入れられるかが重要になってきますし、宇宙資源は必要になるだろうと考えています。