宮本先生:そうですね。人類全体としてみると、私はもう宇宙資源に頼らざるを得ないだろうと思います。
せりか:というと?
宮本先生:私たち地球人は文明を支えるために、ブラジルやオーストラリアから鉄鉱石を持ってきて、コークスを使って金属に還元して使っているじゃないですか。生命が活動しているがゆえに、地球の表面は酸化的……つまり、ものが錆びてしまう環境ですから、錆びているものしか地球の表面にはないので、ものすごいエネルギーをかけて錆びている石から鉄を取り出しているんです。これをやっていると地球の環境が汚れてしまいます。
さらに、地球が誕生してから45億年の歴史のなかで少しずつ貯蓄されてきた様々な資源を、私たちは産業革命以降、莫大な勢いで消費しているんですよ。鉄鉱石や鉄分を多く含んでいる縞状鉄鉱層も使い尽くしてきちゃっていますし、銅がなくなってきていることも話題になっていますよね。リサイクルは必須ですが、それはそれで莫大なエネルギーが必要なので、自然エネルギーだけでは足りずに原子力発電が必要だと思います。ただ今度は放射性廃棄物の問題が出てきてしまいます。
いずれにせよ地球環境とのバランスを取るのは非常に難しい。500年、1000年後はどうしようもなくなってしまうかもしれない。それまでになんとか新しい技術革新を起こして対応する必要がある。科学者たちが1960年代からそれぞれの言葉で警鐘を鳴らしてきたことですが。この状況を解決する方策の一つに、地球内の物質循環に留まらない形がありえて、その意味で宇宙に解決策を見出す時代が必ず来ると思います。
宇宙資源を地球で
宮本先生:例えば地球の周りを周回している天体には、ほとんどが鉄で出来ている小天体がたくさんあると考えられてます……1km程度のものであっても、人類が産業革命以降に生み出すことに成功した全ての量の鉄と白金を含んでいます。これを持って帰ってきたら、無限に使える鉄と白金になります。しかも酸化していないのですぐ使えるし、処理にエネルギーもかからないので環境も汚さない。こういうものはどんどん使ったほうがいいと思うんです。せりか:将来的には宇宙資源を地球で利用する日が来るかもしれないということですね。
宮本先生:でもそれはまだ先の話。宇宙資源利用の第一段階は人類が地球の経済圏から離れた場所で経済圏を確立すること。今はまさにその第一段階の時代が始まろうとしていますね。そのかなり先に宇宙資源を地球に持って帰ってきて、地球で使うというフェーズがあるでしょう。これは両方とも産業革命に匹敵するくらいの大きな変革になるはずです。
せりか:宇宙で経済圏を確立していくためには、どのようなインフラが必要ですか?
宮本先生:これはもちろん輸送や天体上での移動手段、通信、電源も必要ですし、保存したり生産するための宇宙ステーションや基地なども挙げられますから、言い出したら宇宙開発全般の必要なもの、となるでしょうけれど、大事な点は全てが揃っていないと何もできないわけではなく、やりやすいところから実現されていくであろう、ということかと思います。