ラグジュアリービジネスと日本、「翻訳不能な国」の勝ち筋は

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中野:ラグジュアリーは国の文化力と直結しています。フランスが強いのは、国ぐるみで文化的幻想を創ることが巧みであったからということもあると思います。その点、日本のラグジュアリーと日本文化の関係に関してはどのようにとらえていらっしゃいますか?

大西:メイド・イン・ジャパンもありふれているので、どこのエリアでどういう人がつくっているのか、という話じゃないとだめですよね。むしろ、地方創生と連動しています。

中野:地方創生に力を入れ、地方色のある日本のラグジュアリーを発信していこうとされる羽田空港では、アートも重視していらっしゃいますね。フランスのラグジュアリービジネスが強い理由のひとつに、1925年のパリ万博の時にシャネルとゲランが結託し、看板から商業的なものをなくしてアート的なものを主として展開し、「芸術の都、パリ」というブランディングを強化したというエピソードとつながるところがあります。

羽田空港、大阪万博の可能性

大西:そういう意味では、今度の大阪万博も、見せ方が重要になってきますね。万博は文化的イメージを発信する絶好のチャンスになります。

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中野:マスコットキャラの大衆的な広告が乱立することも予想されますが、それはそれで日本の面白さの一面として受け止められるのでしょう。万博も日本のこれからのあり方を示すプラットフォームになりますが、地方と中央、日本と世界をつないでいる羽田空港は、日本のラグジュアリーの統括組織の拠点としても最適の場所に見えます。

大西:実は小池都知事が、フランスのコルベール委員会のような活動を目指して「江戸東京きらり」という組織を立ち上げており、江戸の老舗大企業や中小企業が入って8年ほど経っています。江戸だけではなく、オールジャパンでやっていく必要があり、今がチャンスかなと思っています。

中野:老舗と新興、大企業と中小、と雑多な形態の企業が存在する場合、イギリスのウォルポールのやり方に参考になる点が多いように見えます。ウォルポールはイギリスの250の企業を統括しており、内実はわかりませんが、少なくとも内外に対してオープンに情報を発信し、カンフェランスを開き、年に一回「ブリティッシュ・ラグジュアリーとは?」を考えるブックを出しています。

真似をしようというわけではないですが、そういった類の定期的な内外への発信とともに羽田空港にその実態となる製品やサービスがあるとなれば最強ですね。本日はありがとうございました。

以上のように、大西洋さんにお話をうかがいました。安西さんの「新型」議論につながるコメントをいただければ幸いです。
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文=中野香織(前半)、安西洋之(後半)

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