「全部いりません!」初診の日、全摘を確認|乳がんという「転機」 #5

北風祐子さん


チーム医療「ぞくぞくするほどのプロの仕事」


ここまできて、Mはようやく「ゆうちゃん、手術はもう仕方ないね」と言った。「でも十分取りきれる相手のようだから、あとは手術後にどういう性格を持ったがんなのかがわかって、治療法が決まります。ムンテラは来週の金曜日だったよね、ご家族もいっしょに聴きに行くのがいいです」

「ムンテラ」というのは、初めて聞いた言葉だったので、すぐに検索した。ドイツ語のムントテラピーの略語で、医師から患者や家族に、現在の病状や今後の治療方針などを説明することだ。

「重要な検査は器用な専門医がやって、穏やかな主治医がムンテラと手術。化学療法などになると他の部門が担当。すばらしきチーム医療、背中がぞくぞくするほどのプロの仕事、安心してお任せできる。私は何も心配しないよ! 話を伺っているだけで、安心できます。あとは治療に向けてゆうちゃんが精力と気力をつけないとね!」。最後はまた、食べろ、と背中を押された。

がんの確率、ほぼ100%──|乳がんという「転機」 #1

私はまるで、使い捨てカイロだ。|乳がんという「転機」 #2

ベリーショートの智子がたんぽぽの種に例えた「転移」|乳がんという「転機」 #3

人生最悪の10日間、見えてきたもの|乳がんという「転機」#4

乳がん告知。がっつり生きよう。もっともっともっと|乳がんという「転機」#6

左胸に、さよならを。幸せな人生とは何か|乳がんという「転機」#7

手術。体感時間1分。甘かった…|乳がんという「転機」#8

乳がん初動のイロハ、書かなきゃ|乳がんという「転機」 #9

退院。そして事件は起きた|乳がんという「転機」 #10


連載「乳がんという『転機』」。筆者は電通 チーフ・ソリューション・ディレクターでForbes JAPANオフィシャルコラムニストの北風祐子さん。

初動から立ち直るまでのブログ的記録。11人に1人が乳がんになる時代、大親友がたまたま医師だったおかげで筆者が知ることができたポイントを、乳がんの不安のある女性たちやその家族に広く共有し、お役に立てていただけたらと考えています。

連載はこちら>>

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

タグ:

連載

乳がんという「転機」

ForbesBrandVoice

人気記事