全摘を再確認「全部いりません!」
初診の結果を親友Mに報告すると、「ゆうちゃん、これは見つかってよかった!」と、主治医の「ラッキー」と同じ反応だった。悪くて非浸潤がん。取って終わり。化学療法も何もなし。基本的には再発を考えないので、やはり再建をどうしますかという話になると思われるとのことだった。
非浸潤がんのサイズと乳頭にどれだけ近いか、にもよるが、乳管の一部を切除した場合は、残存乳管が大丈夫だという保証がないために、結局放射線療法が必要という流れになるはず。
放射線もやりたくない! 少しでも安全に再発リスクを減らすということを主とするならば、乳管はすべて取ってしまうという考えになる。ただし、病院独自のデータで、病変だけ取り除いた場合の再発率が極めて低いならば、温存を勧められるかもしれない。
ちなみに非浸潤がんとは、乳管を破って外(周りの脂肪や筋肉)にがんが出てきていないという意味。乳管の中にとどまっているけど、乳管を伝ってどこまでがん細胞が乳管内に広まっているかはわからない。お伝えいただいたマンモの情報だとやはりかなり早期のがんという印象。ただしやはり腫瘤がないので、取ってみないとなんとも言えない。検査は必ず必要、というメッセージ。と、一気に説明してくれた。
そして、主治医のコメントを一つも聞き逃していないどころか、言葉のニュアンス、間合いまで読み取って、真意を探ることができている、さすがだ! と私のことを褒めてくれた。
ここ数年で一番集中して人の話を聞き、持てる記憶力のすべてを使い切ってがんばったので、そこを褒めてくれてうれしかった。私が昔から褒められると伸びるタイプだということを熟知しているMならではのアメとムチ作戦に完全にのっかっていた。
褒められて調子に乗った私は、独自の提案をぶつけてみた。乳房を片側全摘すると、再建しない場合、左右のバランスが崩れて肩こりがひどくなるというが、それなら術後に摘出した部分の重さを測っておいて、同じ重さでパッドを作ればよいのではないか。なので、次回は先生に摘出した部分の重さを測っておいてくださいと頼むつもりだ、と。
これに対してMは、「摘出のグラムねえ。そこまで頭が回るとは、これまたさすが」と、また褒めてくれた。優しい。
主治医は、もし手術になった場合、ちゃんと調べてみてからでないと何とも言えないが、全摘と部分切除のどちらかを選べる可能性がある、とおっしゃった。事前に考えておくように、との配慮からの発言だったのだと思う。
が、即座に私は「アンジェリーナ・ジョリーみたいに両方取ってしまいたいくらいです。全部いりません!」と答えた。すると、「今のは右から左に聞き流しておきます」と言われた。迷わず全摘を選んでいた人でも、実際に術後に乳房の消えた胸を見たとたんに号泣してしまうことがある、というのだ。私は平気です、と心の中でつぶやいた。