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2020.01.17 18:10

「全部いりません!」初診の日、全摘を確認|乳がんという「転機」 #5


「乳頭の裏だからもったいない」とは


初診のあとは、採血採尿、身長体重、肺活量、心電図、胸部X線まで進んだ。その後のスケジュールはこのように決まった。
4/11に造影MRI、エコー再検査、マンモグラフィ再検査、術後ボディイメージ教室
4/14マンモトーム生検
4/21主治医診察、検査結果のお話

まだがんであるとの確定診断が済んでいないが、もしがんだった場合のために、先に手術の順番取りをしておく決まりだとのことで、帰り際に入院の申込みまでさせられた。部屋タイプの希望まで出した。手術をすることになったら、入院日を連絡します、と。ここまで話が進んだら、もう完全に手術の覚悟をせざるを得なかった。

主治医に毎回会うものだと思っていたら、そんなことはなく、約1カ月後に確定診断を聞くまでは、一度も会わなかった。せっせと検査を受けていった。やることがあると、気が紛れる。

エコーの先生は、女性で、とても感じのよい先生だった。人間ドックのエコーとは違って、長時間、入念にみるので、その間ずっとおしゃべりをした。私ががんかもしれないとなった時点から、菜食主義者に変身した結果、野菜続きの食卓にうんざりした中3の息子が家出しそうな勢いだ、といった他愛もない雑談にもつきあってくれた。

一方で、その日の午前中に受けたMRIの結果が早期の非浸潤がんだと教えてくれた。超音波をあてながら、乳管内に石灰化がとどまっている様子を「ほら、大丈夫よ。ここ、わかる? 乳管の内側にあるでしょ」と画像で見せてくれた。

見ても全然わからなかったが、ほっとした。範囲が狭いのに乳頭の裏だからもったいない、とも言っていた。これもまた、全摘したほうがよい、ということだと理解した。

「乳頭の裏だからもったいない」とはどういうことか。Mによれば、おそらく初期の乳管がんなので、がんが大きくなるには乳管を伝うため、乳頭の近くでなければ、乳腺組織をくり抜いてしまえばよいが、私の場合は乳頭に近いので乳頭を残せないのが残念、という意味だそうだ。乳房を再建するのにやはり一番その出来映えがはっきりするのが乳輪乳頭だから、とのこと。

Mも私より前に同じ先生に検査してもらっていたが、誠実で嘘がなく、正確で頼もしい先生だと感じたそうだ。乳房エコーのエキスパートなので、診断はほぼ正しい、とも。次回はあのマンモトーム。全自動は感動モノ、折角だから楽しんできて! と言われた。

会計をしたら、領収書の横に次回の予約日程が追加されていた。4/24形成外科、5/1麻酔科医の術前回診! ということは、5/2に手術するのか? まだマンモトーム生検もしていないのに、気分は前向きに手術へと向かっていた。

マンモトーム生検は、麻酔が強烈に痛かった。範囲がすごく狭いから、もし手術になった場合に場所がわからなくなるといけないので2mmのステンレスクリップを入れました、と言われた。手術にならなかった場合にこのクリップが入ったままで、金属禁止のMRIは受けられるのか、などと知ったかぶりの質問をしてみた。どうせ手術することになるのだから、クリップごと取ってしまうのに、あえて聞いてみた。

すると、マンモトームの先生は、「今のMRIの磁力なら大丈夫です」とおっしゃった。が、実際には、手術のために患部がどこにあるかのマーキングを兼ねていた、ということらしい。
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文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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乳がんという「転機」

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