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海外

2025.04.15 10:30

OpenAIに挑む、AIエージェントの米Writerに大手企業が熱視線を注ぐ理由

Writerの共同創業者でCEOのメイ・ハビブ(Big Event Media/Getty Images for HumanX Conference)

Writerの共同創業者でCEOのメイ・ハビブ(Big Event Media/Getty Images for HumanX Conference)

2016年のある日、人工知能(AI)スタートアップのWriter(ライター)の共同創業者でCEOのメイ・ハビブは、自社の翻訳ソフトを決済大手のVisa(ビザ)に売り込んでいた。レバノン系カナダ人の起業家である彼女はドバイからサンフランシスコへ移住したばかりで、シリーズAの資金調達のチャンスを得るためにも、この取引をすばやくまとめる必要があった。

だが、40以上の言語に対応するデジタル決済サービスを展開したいと考えていたVisaの幹部たちは、それまで人間の翻訳者としか仕事をしたことがなく、彼女の翻訳ソフトが自社のシステムにどう統合されるのかを理解できなかった。そこで現在40歳のハビブはホワイトボードの前に立ち、統合の仕組みを描いてみせた。そして幹部たちが統合上の「穴」を見つけたとき、彼女と共同創業者のワシーム・アルシークは、自宅兼オフィスだったミッション地区の家に戻り、それを埋めるGitHub用の統合機能を徹夜で開発した。

しばらくするとVisaは、12万6000ドル(約1800万円)の契約をWriterに与えて同社初の大口法人顧客となり、Writerは500万ドル(約7億2000万円)の資金調達に成功した。「私たちが売っているのは単なるソフトウェアではなく、仕事のやり方を根本から変えるツールなのです」とハビブは語る。

その後の数年で大きく成長したWriterは、昨年11月の資金調達ラウンドで2億ドル(約290億円)を獲得。評価額が19億ドル(約2700億円)のユニコーン企業となっている。ハビブは同社株式の推定15%を保有しており、その価値は2億8500万ドル(約410億円)に達している。

Writerの翻訳ソフトは、今では「AI Studio」と呼ばれる多機能のAIツール群に進化し、企業が日常的に行う時間とコストのかかる雑務を迅速にこなす役割を果たしている。化粧品大手のロレアルは、このツールで何千件もの商品説明文を執筆しており、ウーバーは顧客サポートのFAQ(よくある質問)の数百の回答を作成している。セールスフォースは、Writerを使ってEメールやSNSの広告キャンペーンの文言をすばやく作成している。

目に見える「コスト削減効果」

これらの企業は、300社に及ぶWriterの法人顧客の一部だ。フォーブスが注目すべきAI関連の50社を選出する年次リスト「AI 50」の2025年版に選ばれた同社は、これまで累計3億2000万ドル(約460億円)を調達している。

多くの企業が「AIには投資に見合う効果があるのか」を模索している中で、Writerの顧客は目に見える形でコスト削減に成功している。ヴィクトリアズ・シークレット傘下のランジェリーブランドAdoreMeはメキシコへの進出に際して、WriterのAIを活用して2900件の商品説明文をスペイン語に翻訳し、数カ月かかる作業をわずか10日で完了させた。

こうした実績によってWriterのNRR(売上継続率)は、驚異的な160%にも達している。これは同社の顧客が契約を平均60%も拡大していることを示すデータだ。ハビブによれば、20社の顧客が最初は20万ドル(約2900万円)〜30万ドル(約4300万円)の契約からスタートしたが、現在ではそれぞれ年間100万ドル(1億4000万円)近くを支払っているという。

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編集=上田裕資

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