サンフランシスコに拠点を置くフィンテック企業Plaid(プレイド)は4月3日、評価額を61億ドル(約8900億円)とする資金調達ラウンドで5億7500万ドル(約840億円)を調達したと発表した。この評価額は、2021年に実施した調達ラウンドにおける評価額である134億ドル(約1兆9500億円)を50%以上下回る。
今回のラウンドは、資産運用大手のフランクリン・テンプルトンやフィデリティ、ブラックロックらが主導し、ベンチャーキャピタルのNEAとリビットらが参加した。
設立12年のPlaidは、新たに調達した資金の大部分を、従業員に付与する譲渡制限付き株式ユニット(RSU)に関連する税金の支払いに充てると述べている。RSUは、将来の決められた時期に会社から株式を付与される仕組みの報酬で、株を受け取った際に税支払いが発生する。Plaidの従業員らは、今後の数年でこの期限を迎えるため、同社はその際にかかる多額の税金を肩代わりする。
Plaidはまた、今回調達した資金の一部を用いて従業員から株を買い戻す予定で、これにより従業員は自身の持ち株を現金化できると広報担当者は述べた。
類似の措置は、2023年3月に65億ドル(約9460億円)の自社株の買い戻しを実施した決済分野のユニコーンであるStripe(ストライプ)でも見られていた。このとき同社の従業員は同社の未公開株を売却することが可能になった。Stripeはその後も少なくとも2回、同様の株式買い戻しを実施した。
Plaidはここ数年、他のフィンテック企業のサービスと大手銀行の口座をつなぐコア事業に加えて、新たに信用リスク分析や不正防止、口座振替決済という3つの分野に事業を拡大しており、これが2023年に見られた成長の鈍化(この年の成長率は12%)からの回復に寄与した。
同社の2024年の売上高は、前年から25%増加して3億ドル(約437億円)を超え、粗利益率は約80%に達したと関係筋は述べている。ただし、Plaidは一般会計原則(GAAP)ベースではまだ黒字化していない。
CB Insightsによれば、2022年から低迷していたフィンテック市場は、ここにきて大きく回復しており、今年の第1四半期に世界のフィンテック企業が調達した資金の総額は、約103億ドル(約1兆5000億円)に達していた。この調達額は、2023年第1四半期以降で最高の四半期あたりの調達額という。
フィンテック分野では、今後数カ月以内の上場を予定する企業もあるが、Plaidは今年中のIPOを計画していない。「数年以内にIPOにこぎつけたいとは思っているが、2025年のIPO計画はない」と、PlaidのCEOであるザック・ペレットは1月にブルームバーグに語っていた。