経営・戦略

2025.03.04 10:00

800万人が利用する米デジタル銀行ChimeがIPOに向け前進、評価額1.5兆円で

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米国最大のデジタルに特化した銀行であるChime(チャイム)は、2024年の収益を前年比約30%増の17億ドル(約2540億円)に伸ばしたと関係筋は述べている。サンフランシスコに拠点を置く同社は、黒字化を果たしていないが、昨年の損失は、2023年の2億ドル(約300億円)を大幅に下回る5000万ドル(約75億円)未満に縮小したという。

また、同社のアクティブ顧客数は800万人に達し、昨年前半の700万人から増加したと別の関係者は述べている。これらのポジティブなトレンドは、Chimeが進める新規株式公開(IPO)に向けた計画が順調であることを示唆している。Chimeの広報担当者はコメントを控えた。

2012年設立のChimeは、無料の当座預金口座とデビットカードを提供することで人気を獲得し、特に、給料を他行よりも2日早く受け取れるサービスを特徴としている。同社のサービスは、主に年収3万5000ドル(約520万円)から6万5000ドル(約970万円)の若年層をターゲットとしたもので、給与や税還付金の振込先に、同社のアカウントを設定した顧客に、200ドル(約3万円)までの無料の貸付や信用スコア向上を支援するセキュアドクレジットカード、個人向けローンなどの特典を提供している。

Chimeの成長を支えているのは、大規模な広告へ投資と、既存顧客へのクロスセル(追加の商品販売)戦略だ。市場調査会社MediaRadarによると、同社は2024年に前年とほぼ同額の約2億ドル(約300億円)を広告費に投じていた。

Chimeは昨年、新たな給与の前払いサービスの「MyPay」を導入し、給料日前に最大500ドル(約7万5000円)を受け取れるようにした。また、スタートアップのSalt Labsを買収して、給与の前払いサービスの提供を強化した。Chimeは、フォーブスが2月に発表したフィンテック分野の年次リスト「FinTech50」に7年連続で選出されている。

Chimeは銀行免許を持たないため、USバンコープといった伝統的な銀行と提携して銀行サービスを運営している。同社の収益の大部分は、デビットカードやクレジットカードの決済時に加盟店が支払う1~2%のインターチェンジ手数料によるものだ。昨年末時点で、Chimeの従業員数は1400人だった。

ブルームバーグによるとChimeは、昨年末に秘密裏にIPOを申請したが、関係者は同社が今年の上半期には上場を目指していると述べている。Chimeの評価額は、100億ドル(約1兆5000億円)以上になる見通しという。

Chime最大の競合の1つであるBlock(ブロック)のCash App(キャッシュアップ)は、ここ最近成長が鈍化しており、2024年第4四半期の月間アクティブユーザー数は5700万人で、前年の5600万人からわずか2%増にとどまった。しかし、Chimeの800万人という利用者数は、Cash Appに比べればまだわずかなもので、成長の余地が大きいと見られている。

既存の大手銀行のサービスを含む米国の銀行アプリ市場におけるChimeのシェアは依然として一桁台にとどまっている。たとえば、大手銀行のChase(チェース)は、昨年末時点で5800万人のモバイルユーザーを抱えていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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