フォーブスは2月18日、最も革新的な金融テクノロジー企業50社を選ぶ年次リスト『Fintech 50』の2025年版を発表した。今年のこのリストに初めて登場したのが、認知症などのメンタルヘルス上の問題を抱える顧客向けに設計された支出管理機能付きのデビットカードを提供するTrue Link Financial(トゥルーリンク・フィナンシャル)だ。サンフランシスコを拠点とする同社のサービスは、約15万人が利用中で年間の決済総額は約7億5000万ドル(約1120億円)とされている。
2012年に設立のTrue Linkは、累計6000万ドル(約89億7000万円)をコースラベンチャーズやQEDインベスターズなどの投資家から調達しており、直近の評価額は1億4400万ドル(約215億円)とされている。
今から約5年前、ロサンゼルスで夫と娘と暮らす42歳のアラナ・ペラレスは、長い間恐れていた緊急の電話を受け取った。当時84歳だった彼女の父親は、十数年前に妻を亡くして以来、アリゾナ州の自宅でひとり暮らしを続けていたが、脳卒中を発症したのだった。その後の数カ月で父親は、現地の高齢者向けの介護付き住宅に移ったが、ペラレスは、遠く離れた場所で暮らす父親の介護に不安を感じていた。
彼女は、父親が以前から、電話セールスの業者や訪問販売員のターゲットにされているのではないかと心配していた。そして今、彼女は父親の支出についても「介護付き住宅」のような仕組みが必要だと考えた。
「父は支援を必要としているけれど、それでもある程度は自分の人生をコントロールしたいと思っている。彼は大人なんだから」と彼女は語る。
その後、ペラレスの夫がオンラインの検索で見つけたのが、True Linkと呼ばれるプリペイド式のVisaデビットカードだった。このカードは、高齢者の親の子供や信頼できる管理者が利用者の取引を監視し、細かな制限を設定できるもので、例えば、電話セールス業者への支払いなどの特定の支出をブロックできる。また、既知の詐欺業者との取引は自動的に拒否され、不審な支出を検知した場合は、管理者にアラートが届く。このカードには、予め設定した金額のみがチャージされる仕組みとなっており、使いすぎを防止できる。
フォーブスは、このカードの発行元であるフィンテック企業、True Link Financialを今年のフィンテック50に選出した。同社は、設立当初は経営に苦戦したが、2022年1月に1億4400万ドル(約215億円)の評価額で1200万ドル(約18億円)を調達して以降に黒字化を達成し、2024年は売上高が3000万ドル(約44億7600万円)に対して200万ドル(約2億9800万円)の純利益を計上したと、共同創業者でCEOのカイ・スティンチコム(42)は述べている。