確かに、True Link Financialが対応しようとしている問題は深刻なもので、かつ拡大している。高齢者に対する金融詐欺は急増しており、現在アメリカでは約700万人がアルツハイマー病を患っている。また、同社の顧客層は、ベビーブーマー世代が高齢化するにつれて、さらに増加する見通しだ。
AIの導入計画を中止
True Link Financialの創業者たちは、現在のカードの形にたどり着くまでに、何度も方向転換を重ねてきた。初期の段階で、彼らはクレジットカードモデルから事前入金型のデビットカードへと切り替えた。その理由について、スティンチコムは「信用スコアの低い人を断りたくなかったし、誰かがクレジットカードの支払いを忘れたことで利息収入を得るようなビジネスにはしたくなかったからだ」と説明する。
しかし、おそらく最も興味深い変更点は、スティンチコムが以前に考えていた人工知能(AI)モデルの活用を取りやめたことだ。「最初に学んだのは、問題を見極めるのは実はそれほど難しくはないということだった。これは、高度なアルゴリズムを使うような問題ではない。例えば、慈善団体への寄付を月50ドルに制限するような設定にAIは必要ない」と彼は語る。
一方、2023年10月までTrue Link Financialのプレジデントを務めた共同創業者のマクドネルは、顧客対応を自身で行う中で、家族が必要とする機能について深く理解することができたと話す。
「アルツハイマー病の患者は、ある日、100件を超える雑誌を定期購読していることに気づいたりする。また、テレビショッピングで健康食品を買いすぎてしまったり、庭の置物を1つだけ注文したつもりが、200個が届いたというケースもあった」と彼女は説明した。
スティンチコムは、True Link Financialの将来の計画の1つに、同社が提供するデビットカードのサービスを、大手銀行向けにホワイトラベル商品(取引先のブランド名で展開するプロダクト)として展開することを挙げている。これにより、銀行は顧客が抱える細かな悩みやトラブルに対応できるようになる。
「金融業界がこの問題の深刻さを理解すれば、こうしたサービスにもっと関心が集まるはずだ」と、スティンチコムは語った。