コーチはしばしば、コーチング会話のパラメーター(範囲)を設定すること、つまりコーチングが職場(および個人)にもたらす恩恵を明確に定義することに苦労する場合がある。最初の段階でこうした詳細な説明がなければ、コーチングは、単なる「マネジメント」の言い換えに聞こえてしまう。一方的な話、あるいは、人々に何をしてほしいかを伝える新手のやり方の1つになってしまうのだ。
適切な導入がなければ、コーチングは、罰や業績改善計画のように見られかねない。あるいは、「根性論」や、成果測定の強調に聞こえるかもしれない(そのあとには「燃え尽き」がやってくる)。労働時間を伸ばしたり直属の上司を増やしたりすることは、誰も望んでいないし、その必要もない。コーチングをどのように進めるかが明確でない場合、抵抗感が生じるのは当然だ。
ステップ1:オープンな姿勢を明確にする
自覚は、コーチング会話の核心的要素だ。クライアントとの会話の中で筆者は、彼らの体験がどこからくるのか、そして、彼らが何を課題とみなしているのかを突き止めることを好んでいる。
重要なのは肯定的な探索、すなわち敬意を払い、断定しないというコンテクストのもとで質問する能力だ。チームメンバーがオープンでない、あるいは受容的でないと感じたら、それはおそらく、本当に正直に話すことが社内方針に反するおそれがあるためだろう(特に、コーチが上司でもある場合はそうだ)。
正直に認めよう。どんな社員にも、上司とは共有できないあるいは共有したくない事情があるものだし、上司自身が問題であるなら、なおさらだ。解雇権限をもっているコーチに、本音を打ち明ける気になるだろうか?
コーチング会話のパラメーター設定は不可欠だ。とりわけ、会話で取り上げることと、取り上げないことの線引きは重要だ。話し合うべき共通の目標や目的とは何だろう?
こうした会話が相互のインプットに基づいたものでない限り、本当にオープンな姿勢は生まれない。そして、オープンな姿勢がなければ、それはただの「言われたとおりにやれ」という命令であって、コーチングではない。
ステップ2:許可の重要性
自覚がなければ、問題や課題は見えないままだ。認識されず、話題にもされない。人間関係に無頓着で、チームメンバーへの敬意を欠き、空気を読めない人との間に、摩擦を感じたことはないだろうか?
許可を求めることは、会話の突破口になり得る。コーチングを受ける側は、許可を与えることで、より主体性を感じられる。ある話題を掘り下げることを自ら選択し、関心を示すことになるからだ。こうした相互利益の観点は、コーチング関係において決定的に重要だ。
ステップ3:合意の模索
相互の合意は、コーチングと従来のマネジメントを区別するものだ。コーチングにおいては、アジェンダや目的は、パートナーシップに基づいて設定され、最大の恩恵をもたらす結果を共同で創造する。一方、マネジメント関係にあるのは合意ではなく期待だ。
コーチングを成功させるには、相互の合意を基礎としなければならない。合意を形成し尊重する形で、チームのコーチングができているだろうか?