1977年に地球を旅立ち、現在は約250億kmの彼方の恒星間空間を航行中の無人探査機ボイジャー1号の姿勢制御スラスターを、米航空宇宙局(NASA)のエンジニアたちが21年ぶりに復活させることに成功した。ボイジャー1号は老朽化が進んでおり、問題のスラスターは2004年から作動不能となっていた。
地球から最も遠い人工物
時速5万6000kmで航行を続けているボイジャー1号は「地球から最も遠い人工物」だ。アンテナを常に地球に向けて通信を行えるよう、スラスターで機体を回転させて姿勢を制御している。しかし、約50年にわたる宇宙の旅の間にハードウェアの劣化が進み、ミッション全体がエンジニアの創意工夫にかかっているのが現状である。
NASAが宇宙に打ち上げた人工物の寿命の引き延ばしを図るのはこれが初めてではないが、ボイジャー1号は間違いなく、これまでに人類が生み出した中で最も有名な宇宙機だ。2027年には打ち上げ50周年を迎えるが、無事その日を迎えることはできるのだろうか。

スラスター復活へ、起死回生の挑戦
NASAジェット推進研究所(JPL)によると、ボイジャー1号の機体の回転運動を司る姿勢制御用の主スラスターは、内部ヒーターが2004年に故障したことで作動しなくなり、これまで21年間は予備スラスターが使用されてきた。だが、予備スラスターも劣化が進んでいる。そこでエンジニアたちは、故障した内部ヒーターに立ち戻り、21年前に電源スイッチに起こった不具合の解消を試みたのだ。
地球からボイジャー1号に無線信号が届くまでには23時間以上かかったが、複数のコマンドを送信し、約250億kmの距離をまたいだ修復作業は成功した。このミッションで推進技術チームを率いたJPLのトッド・バーバーは、「実にすばらしい瞬間だった」と振り返っている。「これらのスラスターはもはや死んだと思われていた。またひとつの奇跡が起こって、ボイジャーを救ったのだ」