オフィスで生じる芝居がかった騒動(オフィスドラマ)は火事のようなもので、酸素、つまりこの場合は感情的な反応によって成長し、ドラマに参加すればするほど炎は大きくなる。ドラマチックな性格のもち主は大げさに騒ぎ立て、些細な状況を本格的な危機にまで発展させる。彼らの熱量に合わせていくと、火に油を注ぐことになる。
オフィスドラマの心理学
筆者が創業したLeadership IQ(リーダーシップIQ)の研究によると、オフィスドラマが生じがちな環境で働く従業員は、ストレスの増加やエンゲージメントと生産性の低下を経験している。これは、こうしたドラマが単に迷惑なだけでなく、積極的に害をもたらすものだからだ。
感情的な過剰反応は混乱を生み、否定的な感情を増幅させ、意義ある仕事の軌道を狂わせる。しかし、ドラマチックなやりとりを正しく処理する方法を知っていれば、ドラマを直ちに止められる。
事実で脚本をひっくり返す
ドラマは、感情を糧にして生き続ける。ショックを受けたり、フラストレーションを感じたり、同情したりするような反応を示すと、それがエスカレートする。これらの反応は、ドラマ好きな傾向にある人物の状況認識を正当化するからだ。
人間は生存のためのメカニズムとして、予期せぬ出来事に対して感情的に反応するようにできている。職場ではこうした本能が、時として必要のない大混乱や意思疎通の食い違いを招くことがある。しかし、状況をコントロールする簡単な方法がある。事実にのみ目を向けることだ。
ドラマチックなことが大好きな同僚が大げさな話をするとき、彼らは反応を求めている。彼らはあなたが息を呑み、パニックになり、彼らの極端な解釈を正当化してくれることを望んでいる。
だがそんな反応ではなく、力強い言葉で応えよう。つまり、「事実だけ教えてほしい(Just the facts, please)」という言葉だ。
ひとりの従業員がオフィスに飛び込んできて、「ひどいもんだ!洪水で水浸しだよ!ビル全体を立ち入り禁止にすべきだ!」と言ったとしよう。相手が何を言っているか見当もつかないとき、最初に示す反応はこれだけでいい。「何が起きたかわからないから、事実だけ教えて」
次にどういうことが起こるのか。
・彼らは「どんなにひどかったか、君には想像もできないよ!」と言って、あなたをひとつの解釈に引きずり込もうとするかもしれない。
・そして「全館避難すべきだ!」と述べて、感情的な反応に押しやろうとする。
・しかしここで冷静に「君の言うことはわかったよ。でも、いまは事実が必要だ」と繰り返せば、ドラマは萎み始める。