欧州

2024.08.23 10:00

ロシア軍、クルスク戦線に新兵器「光ファイバードローン」を投入 電波妨害効かぬ難敵

ジャミングやその他の通信面の問題に対する解決策のひとつは、AI(人工知能)を活用した終末誘導である。AIの支援で終末誘導されるドローンは、操縦士がある程度離れたところから目標をロックオン(自動追尾)すると、接続が切れても目標を追っていく。この種のドローンはウクライナとロシア双方が少しずつ使い始めている。

もうひとつの解決策が有線誘導だ。光ファイバー誘導のドローンは、装着されたリールからケーブルを繰り出しながら飛んでいく。TOW対戦車ミサイルなど数十年前から使われている有線誘導ミサイルの誘導方式と似ているが、光ファイバーでは高解像度の映像信号も伝送できる。

ウクライナは今年3月、ロシアの光ファイバードローンを鹵獲したが、これは試作品で1点だけだったようだ。光ファイバードローンはウクライナでも開発されていることが知られているほか、今月にはドイツのハイキャット(HIGHCAT)社が自社の光ファイバードローン「HCX」の実証実験をウクライナで行っている。

そしてこのほど、光ファイバードローンによる史上初の攻撃とみられる戦闘の映像が登場した。

異様に鮮明な映像

8月12日にソーシャルメディアで共有された動画は、クルスク州のスジャ町の南東にあるギリー村で、光ファイバードローンがウクライナ軍のBTR-4装甲偵察車を攻撃した様子とされている。攻撃が実際に光ファイバードローンによるものなのかは確認できないが、映像に異様なほど干渉がないのはわかる。

ロシアの兵器システムを専門とするOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのRoyは筆者の取材に、この映像のスクリーンショットは「解像度と鮮明さの点で前例がない」とコメントした。

8月18日、ロシアの軍事テレグラム・チャンネル「シベリア軍団」は、より詳しい説明がつけられた別の攻撃映像を投稿した。ドローンは「ノブゴロドのバンダル王子」(KVN)という名前の光ファイバードローンで、ロシア北西部のノブゴロド市にあるウシュクイニク科学生産センターが開発したものだという。

Royはこの映像についても「ロシア軍によるギリーでの攻撃と同様に、普通より高解像度で干渉がまったくない」と述べている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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