スカイノードSは7月上旬に発表されたばかりだが、すでにウクライナの前線で使用されている。スカイノードSを搭載したドローンは遠距離から目標をロックオン(捕捉・追尾)できるので、電波妨害は役に立たない。安全上の理由で共有できないが、筆者は映像をいくつか見せてもらった。留意すべき点もあるものの、判断できる限りこのシステムは有効なようだ。オーテリオンのローレンツ・マイヤー最高経営責任者(CEO)は筆者に、FPVドローンを目標に自動で命中させるのはほんの始まりにすぎないとも語った。
オーテリオンのアプリストアでは、開発者が必要なアプリをダウンロードするだけでなく、スカイノードS用に自分でアプリを作成することもできる。マイヤーによると、現在最も人気なのは攻撃ドローンの終末誘導用アプリだという。
「終末誘導(用アプリ)はノートパソコンで言えばマイクロソフトの『オフィス』みたいなものです」とマイヤーは話す。「誰もが最低限必要と思っているものです」
価格わずか数百ドル
マイヤーは、10年以上にわたりドローン用のオープンソース・ソフトウェアを普及させる運動を主導してきた専門家だ。2008年、スイスのチューリヒ工科大学在学中に自律型ドローンの開発を始め、それはオープンソース・ソフトウェアで動作するフライトコントローラー(飛行制御装置)「ピクスホーク4(Pixhawk 4)」(通称PX4)として結実する。PX4では開発者に柔軟性の高いツールを提供していて、開発者数は現在、世界全体でおよそ1万人を数える。PX4はドローンのほかにロボットなどにも搭載されている。オーテリオンのオープンソース・ソフトウェアは、米国の小型軍用ドローンなどの安全性を確保する米国防総省の取り組み「ブルーUAS」(編集注:UASは無人航空機システムのこと)の中核にも据えられており、国防総省からも信頼されているのは明らかだ。ブルーUASは、セキュリティーリスクが内在し、米軍で使用が禁じられている中国製ドローンに代わるドローンを確保するために導入された。
オーテリオンはスカイノードSに先立ち、同様の強力なオートパイロット・ミッションコンピューターである「スカイノードX(Skynode X)」を開発していた。これもマシンビジョン(機械視覚)や物体認識、視覚航法、さまざまなサードパーティー製アプリなどによってドローンに自律性を与える装置だ。新たに発表したスカイノードSでは、同様の機能に対応しつつ、大幅なコストダウンを実現した。
マイヤーによれば、スカイノードSはウクライナ向けには特別な価格帯で提供される。「アンドロイドのスマートフォン程度の数百ドル」だという。
FPVドローンの追加装備としては、サーマルイメージング(熱映像)カメラと同じくらいの価格帯になる。FPVドローン本体の価格は500ドル(約7万8000円)程度だから、全体の価格はそれなりに高くなるが、能力は大幅に向上する。コストは生産規模が拡大するにつれて下がるかもしれない。