第1部:電子電撃戦
ロシアのテレグラムチャンネル「トロイカ」によると、ウクライナ軍は今回、以前に北東部のハルキウ州方面でより小規模なかたちで試していた戦術を用いた。これについてはOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのRoyが取り上げている。ウクライナ軍はまず、ロシア側の監視網を張っている航空機型偵察ドローン(無人機)を撃墜し、ロシアの指揮官の目をくらました。撃墜には、防空レーダーと連携した最新兵器である迎撃FPV(一人称視点)ドローンが使用された可能性がある。
ロシア側の監視網を一時的に遮断すると、ウクライナ軍は次に短距離のジャマー(電波妨害装置)を前線に持ち込んだ。ジャマーには電子戦(EW)による偵察活動で収集したデータがプログラムされていた。
アナリストのWarTranslatedが紹介しているところによると、あるロシア人ブロガーは「(ウクライナ軍は)国境無線通信網で使われている主要周波数とドローン制御用の周波数を特定し、わが方の通信を“クラッシュ”させる強力なジャマーを用意した」と報告している。
ウクライナ軍がこれらの周波数を割り出せたのは、ロシア側がこの方面に高い優先順位を与えておらず、最新の機材を配備していなかったことが一因だろう。ウクライナの前線では、ジャミングされた周波数を回避するたびに新しいジャマーで対抗されるというふうに、ドローンとジャマーの戦いは絶え間ない更新が求められる軍拡競争の様相を呈している。この方面のロシア側ドローンは最新のジャマー対策がとられていなかったようだ。
その結果、目標の探知・識別や、大砲やFPVドローンの誘導に不可欠なドローンが機能しなくなった。WarTranslatedが引いているロシア人ブロガーによれば、ランセット徘徊弾薬(自爆ドローン)も深刻な影響を受けたとされる。