欧州

2024.08.13 15:00

ウクライナはクルスク電撃侵攻をどのように成功させたのか 現代戦の最前線

Shutterstock.com

突かれた脆弱性

ロシアの軍事評論家たちは、ロシア軍に対して国産のVT-40FPVドローンで「空を埋め尽くし」、クルスク侵攻を一掃するよう求めた。VT-40はロシアの志願兵部隊を前身とするグループ、スドプラトフが、ロシア国防省との契約のもと大量に生産している。ただ、このドローンをめぐっては、メーカー側による制御信号のアップデートが遅いため、しばらくすると容易にジャミングされるようになるという点が大きな批判を浴びてきた。今回もまさにそうだったようだ。
advertisement

ロシア側も電子戦におけるこうした脆弱性はよく認識していて、光学誘導する最新の半自律型FPVドローンの導入を進めている。このタイプのドローンでは、オペレーターは遠方から目標をロックオン(自動追尾)し、ジャミングに関係なく狙い続けることができる。しかし、こうしたドローンはまだ大量になく、クルスク州の防衛線のような優先順位の低い方面には未配備だった可能性が高い。

ジャミング対策の不備は敵側に、ジャミング電撃戦を成功させ、地上部隊が突破口を開くのに十分な時間、上空でドローンが完全な優位性を握る一時的な機会を生み出す。

今後、半自律型や完全自律型のドローン、あるいは光ファイバーケーブルのような耐ジャミング技術を用いたドローンが一般的になれば、空から敵ドローンを一掃するのはそれほど簡単にはいかなくなりそうだ。
advertisement

一方で、別のアプローチもあるかもしれない。上空でドローンの優勢を確保できれば、機動戦はなお可能なようだ。ジャミングが通用しなくなる可能性がある半面、ドローン同士の格闘戦という、より動的な戦い方はますます実行可能なものになっている。

もともとの電撃戦が敵の航空攻撃で阻止されないように制空権の確保を必要としたように、現代の電撃戦でも、敵の偵察ドローンや攻撃ドローンをつぶす戦闘ドローン群からなるドローン航空戦力が必須になるかもしれない。ドローン部隊が敵ドローンを抑止できるかどうかで、地上攻撃の成否は決まるかもしれない。

クルスク州の戦線の状況は依然としてきわめて流動的だ。ウクライナの情報筋は作戦の詳細は明かしていない。ただ、一連の行動が終わったあかつきには、戦争の歴史で新たな章が記されたことが明らかになるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事