欧州

2024.05.28 17:00

ロシアはウクライナとの「FPVドローン戦」に負けている

hurricanehank / Shutterstock.com

小型のドローン(無人機)、とりわけ自爆型のFPV(一人称視点)ドローンは、ウクライナで繰り広げられている消耗戦で重要な兵器になっている。北大西洋条約機構(NATO)の当局者は最近フォーリン・ポリシー誌に、ここ数カ月、ロシア軍が被った戦車の損害の3分の2超はFPVドローンによるもので、大砲や誘導ミサイルなどほかの兵器によるものを凌駕していると語っている。双方とも大量のFPVドローンを生産しているが、ここへきてロシア軍のドローン攻撃は失速し、ウクライナ軍のドローン攻撃が急増している。ロシア側が行き詰まった背景には何があるのだろうか?

生産方式の違い

FPVドローンは、小型のレーシング・クワッドコプターを自爆機に改造したもので、20km先の戦車やその他の目標を破壊できる低コストの精密兵器だ。大砲や歩兵陣地、トラックなどに対しても有効であることが証明されている。2023年に入りFPVドローンの使用が増えるにつれて、ロシア軍もウクライナ軍もこの新兵器の重要性を認識し始めた。

ウクライナでドローン向けの資金集めに携わる人は昨年11月、「何度も言ってきたことだがもう一度言う。もし国がいま、この産業(FPVドローンの製造)に大きなリソースを投じなければ、数カ月後に軍の状況は著しく悪化しているだろう」と警鐘を鳴らした

ロシアでも同年12月、プーチン大統領自身が「高精度弾薬とドローンの生産と供給を大幅に増やす必要がある」と言及している。

FPVドローンは市販の部品などを組み立ててつくられ、総額で500ドル(約7万8000円)もかからない。ウクライナではスタートアップのエスカドローン(Escadrone)やNPO(非営利組織)のワイルド・ホーネッツ(Wild Hornets)など、数十の小規模組織から調達されている。政府は国民に空き時間を利用して自宅でFPVドローンを組み立てることを奨励するイニシアチブも進めており、1万人以上が登録している。

こうしたさまざまな取り組みは実を結んでいるようだ。ウクライナでは昨年12月に約5万機、今年1月と2月には月平均10万機のFPVドローンが製造されたと報告されている。ゼレンスキー大統領は2024年に100万機の生産を目標に掲げており、その達成に向けて順調に進んでいる。
次ページ > ロシアではFPVドローンも集中型の生産体制となっている

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事