生産方式の違い
FPVドローンは、小型のレーシング・クワッドコプターを自爆機に改造したもので、20km先の戦車やその他の目標を破壊できる低コストの精密兵器だ。大砲や歩兵陣地、トラックなどに対しても有効であることが証明されている。2023年に入りFPVドローンの使用が増えるにつれて、ロシア軍もウクライナ軍もこの新兵器の重要性を認識し始めた。ウクライナでドローン向けの資金集めに携わる人は昨年11月、「何度も言ってきたことだがもう一度言う。もし国がいま、この産業(FPVドローンの製造)に大きなリソースを投じなければ、数カ月後に軍の状況は著しく悪化しているだろう」と警鐘を鳴らした。
ロシアでも同年12月、プーチン大統領自身が「高精度弾薬とドローンの生産と供給を大幅に増やす必要がある」と言及している。
FPVドローンは市販の部品などを組み立ててつくられ、総額で500ドル(約7万8000円)もかからない。ウクライナではスタートアップのエスカドローン(Escadrone)やNPO(非営利組織)のワイルド・ホーネッツ(Wild Hornets)など、数十の小規模組織から調達されている。政府は国民に空き時間を利用して自宅でFPVドローンを組み立てることを奨励するイニシアチブも進めており、1万人以上が登録している。
こうしたさまざまな取り組みは実を結んでいるようだ。ウクライナでは昨年12月に約5万機、今年1月と2月には月平均10万機のFPVドローンが製造されたと報告されている。ゼレンスキー大統領は2024年に100万機の生産を目標に掲げており、その達成に向けて順調に進んでいる。