欧州

2024.05.28 17:00

ロシアはウクライナとの「FPVドローン戦」に負けている

一方、ロシアでは事情が異なる。ロシアでも多くの小規模な事業者が「ウプイリ(吸血鬼)」や「ジョーケル(ジョーカー)」といったFPVドローンを製造しているが、これらのドローンは政府の支援を受けず、資金を寄付に頼っている。ロシアでのドローン生産はウクライナよりも集中化されているとみられ、志願兵部隊が前身のドローン製造スタートアップで、ロシア国防省から資金援助を受けるスドプラトフ・グループが中心を担っている。スドプラトフは昨年12月、FPVドローンを1日あたり1000機生産していると主張し、製造工程などの動画も公開している。

こうした生産方式は、ロシアによるほかのドローンの生産の場合と同様だ。ロシアが主に用いている長距離ドローンはイランで設計された「シャヘド」(ロシア名「ゲラン2」)、戦術攻撃ドローンはカラシニコフ・コンツェルン製の「ランセット」とそれぞれ1種類だけで、シャヘドはロシア国内の生産工場も西部のエラブガの1カ所しかない。対照的に、ウクライナではさまざまなメーカーが長距離ドローンを少なくとも15種類、「ウクライナ版ランセット」とも呼ばれる戦術攻撃ドローンも数種類つくっている。

昨年12月まで、ロシア軍はFPVドローン攻撃をウクライナ軍より多くとまではいかなくても、同数程度は実施しているとみられていたが、FPVドローン戦でどちらが優位に立っているのかは不明だった。

米シンクタンクの海軍分析センター(CNA)と新アメリカ安全保障センター(CNAS)のアドバイザーを務め、ロシアのドローンに詳しいサミュエル・ベンデットによると、「ロシア側でもウクライナ側でも、解説者やブロガーは、敵側のほうがドローンを多く保有しており、運用にも長けていると言うことが多い」という。

ソ連式の集中化は規模の経済性をもたらすが、こうした生産方式には大きな欠点もある。ロシア側のFPVドローンに関する取り組みの効率性が劇的に低下したのも、それが関係しているのかもしれない。

急減したロシア軍のFPVドローン攻撃

OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのDanieleは先ごろ、3月末までの両軍によるFPVドローン攻撃に関する詳細なレポートを発表した。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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