欧州

2024.05.23 16:30

今度はウクライナ軍の自爆ドローンが進化か 戦車撃破に見え隠れする「新技術」

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ウクライナ各地の工房は軍向けに自爆型のFPV(一人称視点)ドローンを月に10万機以上製造している。相当な数だ。とはいえ各ドローンの重量は900gかそこらしかなく、搭載する弾薬も通常は500g程度の擲弾(てきだん)1個だ。

つまり、10万機のFPVドローンは「多数」の火力ではあっても、あまり「強力」な火力ではない。FPVドローンは無防備な歩兵にとってはきわめて危険だが、装甲車両は普通、FPVドローンによる複数の攻撃をしのぎ、戦闘を継続できる。

だが、それが変わりつつあるようだ。ウクライナ軍のドローン部隊は、FPVドローンの破壊力を大幅に高める方法を見つけたらしい。最近、ウクライナ東部ドネツク州で、ウクライナ側の防御線に向けて進んでいたロシア軍のT-80戦車のケースを検討してみよう。

ウクライナ軍第47独立機械化旅団の偵察ドローンが上空から監視するなか、1機のFPVドローンが重量40t強・乗員3人のT-80の前方を横切って飛んでいく。このT-80は爆発反応装甲のブロックやドローン対策のスクリーンをまとっている。

FPVドローンは旋回し、T-80に突っ込んでいく。戦車はたいていの場合、FPVドローンの攻撃を受けても軽微な損傷で済む。ところがこのT-80はドローンの直撃後に大爆発を起こし、炎上する。砲塔は車体から吹き飛び、乗員は車体内で焼かれている。

このFPVドローンの操縦士がたんに運がよかっただけなのか。それとも、何らかの新しい技術が関わっていたのか。米国防総省の国防契約管理局(DCMA)の品質監査官を務めたトレント・テレンコは、後者ではないかとにらんでいる。「ウクライナのFPVドローンの製造者はスウェーデンのRBS56ビル対戦車ミサイルのアイデアを借用したのではないか」と。

スウェーデンのボフォース社が開発したRBS-56ビルに搭載されている11kgほどの弾頭は、ミサイル下面のセンサーで起爆されると前方ではなく下方に爆発する。そのため、戦車の上面の薄い装甲を狙って攻撃する「トップアタック」ができる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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