欧州

2024.05.28 17:00

ロシアはウクライナとの「FPVドローン戦」に負けている

ウクライナ側による電波妨害に加え、ロシア軍のFPVドローン操縦士はまた別の問題にも直面している。味方のジャマーだ。

ウクライナ側のFPVドローン攻撃に絶えずさらされているロシア側は、ジャミングの防御をオフにするのに慎重になっている。そして、これはロシア軍のドローン操縦士にとって不運な結果をもたらしている。ニューズウィーク誌は3月、ウクライナ東部アウジーウカ方面ではロシア軍の「FPV(ドローン)部隊と電子戦部隊の連絡がまったくなく」、その結果「多くのドローンが自軍による電子戦で抑え込まれてしまっている」という、ロシアの著名な軍事ブロガー、スビャトスラフ・ゴリコフのコメントを伝えている。

こうした状況は「前線の兵士が、より高い指揮権をもつ部門から来る者に問題を報告することを禁じた直接の命令」(ベンデットが引用しているロシア側の情報源)があるために悪化している。悪いニュースは隠蔽しなくてはならないのだ。

ロシアにとって、これは因果応報とも言えるだろう。腐敗した独裁体制が自らの腐敗の犠牲になっている。ロシアの資金はまたしても、有効な兵器を供給しない請負業者に吸い取られ、もっと有能かもしれない競合相手はコネがないため資金不足に陥っている。

ウクライナも軍需品の調達で汚職問題を抱えるが、その根絶に向けた取り組みはロシアよりもずっと効率的に進められるとみられる。ウクライナは自由な企業によるイノベーションの文化が盛んで、ドローンに関しても健全な競争のある多様なエコシステムが生まれている。この違いこそ、小型ドローンの軍拡競争でウクライナ側が着実にリードしている理由だろう。

もちろん、FPVドローンだけで戦争に勝つことはできない。それでも、ウクライナはロシアの車両生産を上回るスピードでFPVドローンを生産でき、それを使ってロシア軍をじわじわと蝕んでいる。その数が百万単位に増えるにつれて、効果はどんどん大きくなっていくだろう。FPVドローン1機で平均1人の損耗が出ているとすれば、FPVドローンが100万機使われれば確実に大きな影響をおよぼすはずだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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