ウクライナ軍、ハリウッドのドローン技術でロシアの戦車を狙う

ウクライナ東部ドネツク州でドローン操縦の訓練に臨むウクライナ軍兵士。2023年5月11日撮影(Vincenzo Circosta/Anadolu Agency via Getty Images)

レース用ドローンに爆発物を積んだ自爆型ドローンは、ウクライナでの戦争を特色づける存在となった。FPV(1人称視点)ドローンと呼ばれ、ビデオゴーグルを装着して操縦することが多いこの種のドローンは、通常のクアッドコプターよりも操縦が難しいが、塹壕に飛び込み、ドアやハッチを潜り抜け、移動中の車両に体当たりするといった用途に使える。これまでウクライナの戦場で見られたFPVドローンのほとんどは、Escadroneなどのウクライナ人有志グループや兵士自身が小さな工房で作製した、いわば職人芸のようなものだった。だが、まもなく工場で製造されたFPVドローンが、ウクライナとロシアの双方から前線に投入される。最も珍しいのは、映画業界向けに開発された技術を使用したものだ。

5月初め、米Red Cat Holdings(レッド・キャット・ホールディングス)はウクライナ向けFPVドローン200台を受注したと発表した。同社は、子会社のTeal Drones(ティール・ドローンズ)が米国防総省の「Blue sUAS」構想の下、中国製民生用ドローンの代替品として米軍向けに偵察用クアッドコプター「Golden Eagle(ゴールデンイーグル)」を開発したことで有名だ。ゴールデンイーグルも一部がウクライナで運用されているが、今回発表された軍用FPVドローンは新型だ。

レッド・キャットの広報担当者はフォーブスの取材に対し、新型ドローンの名称は明かせないと答えた。発表されてはいないが、爆薬を搭載して兵器化される可能性が高い。広報によると、最大積載量は2ポンド(約907グラム)、最大航続距離は10キロで、GPSジャミング環境下でも運用可能な点が主な特徴だという。GPS信号の妨害により無力化されるクアッドコプターはここ数カ月増加傾向にあるため、これは重要な性能といえる。

ロシアもまた、FPVドローンの増強を図っている。5月にモスクワで開催された航空産業の年次見本市ヘリロシアで、ドローンメーカーのSvyaz Spetszaschitaは新型の自爆型FPVドローン「Fighter 40」を発表した。すでにウクライナで運用が始まっているとしている。

同社は工業用、農業用、警備用のドローンを製造しているが、軍事プロジェクトについては公式サイトに記載がない。Fighter-40は最大積載量5ポンド、最大航続距離12キロで、メーカーの説明によれば「片足を泥の中に突っ込んだ」状態での操縦性と信頼性は、改造した民生用ドローンより高いという。発注数と納期は不明だ。

しかし恐らく、ウクライナに投入される最も先進的な新型FPVドローンは、米国が2月に発表した安全保障支援パッケージに盛り込まれた米Cyberlux(サイバーラックス)の「K8」だろう。K8は同社のドローン製品リストにも掲載されておらず、まったくの未知数だ。わかっているのは、サイバーラックスのマイケル・シュミット最高経営責任者(CEO)がウクライナ軍向けにK8のデモンストレーションを実施し、気に入られたということだ。
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編集=荻原藤緒

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