重量約500kgのR-37Mは、200km以上離れたウクライナの戦闘機を攻撃できる。ウクライナ侵攻で使用されている空対空ミサイルで最も射程が長く、戦力が落ちているウクライナ空軍にとって最大の脅威となっている。
だが、ウクライナ側ではそれに対抗する試みが進められている。オランダと英国の「戦闘機連合」は、ウクライナ空軍のパイロットに対し、米ロッキード・マーチンの戦闘機F16の操縦を訓練すると発表。早ければ今夏にも第1陣が訓練を終え、オランダをはじめとする北大西洋条約機構(NATO)加盟国が余剰のF16AM/BMおそらく数十機をウクライナに供与する見込みだ。
最新のレーダーと長距離空対空ミサイルAIM-120を搭載した機敏な超音速戦闘機であるF16は、MiG-31に対抗できる可能性がある。ウクライナ空軍のセルヒー・ゴルブツォフ准将は「もしわれわれが、例えば射程約180kmの米製空対空ミサイルAIM-120を使用できるプラットフォームを持っていれば、向こうはこれらのミサイルの射程範囲内に踏み込んで国境に近づくことはできないだろう」と述べている。
英王立防衛安全保障研究所が昨年11月に発表した報告書は、ロシア空軍の戦闘空中哨戒は「ウクライナ空軍の攻撃機や戦闘機に対して非常に有効であることが証明されており、特にMiG-31BMと長距離空対空ミサイルR-37Mが問題だ」と指摘している。
ただし、MiG-31とR-37Mの組み合わせの有効性を過大評価しないことが重要だ。MiG-29を操縦するウクライナ軍のパイロットは、リトアニアのニュースサイト、デルフィに対し、両兵器の組み合わせは無敵ではないと語っている。
「ジュース」と名乗るこのパイロットによると、R-37Mはウクライナ軍機の破壊にはそれほど成功していないが、ウクライナのパイロットは同ミサイルによる攻撃を避けるため、予定していた飛行経路から外れることを余儀なくされている。
ウクライナ軍のパイロットは、「ノッチング」と呼ばれる巧みな操縦でR-37Mをかわすことができる一方で、ミサイルを発射したMiG-31への反撃は容易ではない。ウクライナ軍が保有する空対空ミサイルで最も射程が長いR-27は、射程が96km以下だ。
MiG-31の乗員はロシア上空を安全に旋回しながら、R-37Mをウクライナの領空160キロ以上の深さまで打ち込むことができる。ウクライナ軍は、それに対してなすすべがほとんどない──少なくとも今は。
F16が到着すれば、ウクライナ空軍は対抗手段を手にする。重量約160kgのAIM-120を発射するF16は、射程ではR-37Mを発射するMiG-31にやはり劣るものの、ウクライナ空軍にとって射程面での不利は大幅に軽減される。
ゴルブツォフが指摘したように、前線の近くを飛ぶF16はMiG-31をロシア国内の奥深くに追いやり、ロシアの迎撃機がリスクを負うことができる範囲を大幅に縮小させる可能性がある。そうなれば、ウクライナの戦闘機は今まで以上に広範に、そして頻繁に飛行することができ、多くの任務を遂行することができるようになるはずだ。
(forbes.com 原文)