スタートアップ

2024.06.24 18:15

“ユニコーン”に戻ったFigmaが描く「製品開発の未来」

20歳の時に共同創業した「Figma(フィグマ)」を率いるディラン・フィールドCEO Kohichi Ogasahara

「私は、オープンソースを通じてデザインを取り入れたり、インスピレーションを与えたりする方法があれば、同じものを何度も作らなくても済むようになると信じています。実際、デザイナーの作業時間の多くは、繰り返しの作業に費やされることが多いのです。
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例えば、ボタンの作り方を知っているデザイナーなら、何千回も作る機会があるでしょう。もしデザインのシステムやコミュニティからボタンを作る方法を学べたら? ボタンを一度作ってしまえば、他のユーザーがそれを見つけ、使うだけで済みます。そして、世界が見たこともない新しいものを、あなたの頭脳と時間、スキルを使って創りに行けるのです」

しかも、AI(人工知能)と、生成AIの進歩がこの流れを加速している。前出の山下CPOは、これを「AIはハードルを下げ、天井を上げる」と表現する。すなわち、AIがパターン化された作業を代替することにより、多くの人のデザイン制作への参入障壁が下がると同時に、プロのデザイナーにとってもメリットがあるというのだ。

「今までデザインのプロセスに多くの人々が参加できなかったのは、『ハードルが高い』ように思われたからです。AIを使えば、少なくとも参加できるようになります。アプリを改良するアイデアがあるとしましょう。今はまだデザイナーにメールやSlackでそのアイデアを伝えるだけかもしれませんが、これからはFigmaでアイデアを『視覚化』できます。すると、『こういうことを言いたかったのか!』と、議論の内容が濃くなりますし、フィードバックも洗練されます。これが『ハードルを下げる』ということです。『天井を上げる』というのは、プロのデザイナーにとってそうした作業のすべてが格段に速くなるということです。デザインにも、同じ作業の繰り返しがあります」(山下祐樹)
 
「AIはハードルを下げ、天井を上げる」と語る、Figmaの山下祐樹CPO Courtesy of Figma

「AIはハードルを下げ、天井を上げる」と語る、Figmaの山下祐樹CPO Courtesy of Figma

デザインへの思い入れと、課題や可能性を理解していたからこそ、フィールドとウォレスは「デザイン」からアプローチしてきた。だが、Figmaの創業ミッションは「想像と現実の間の溝をなくす」である。デザインの工程には、その“前後”が存在する。当然、同社はアイデアを生み出すホワイトボーディングやブレインストーミングといった集団思考を簡単にするデジタル・ホワイトボードツールも開発している。「FigJam(フィグジャム)」である。
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もともと、「Figmaデザイン」内にあった機能だが、よりアクセスしやすい製品としてスピンアウトさせた、とフィールドは明かす。その開発を加速させたのは、2020年に生じた新型コロナウイルスのパンデミックだった。コロナ禍で在宅勤務を強いられたユーザーたちは、一緒に集まり、つながり、考えを共有できるような場所を探していた。需要が高いだけに開発は時間との競争だったが、FigmaはFigJamを6カ月で作ることに成功。2021年にローンチしている。
次ページ > アイデアやデザインをかたちにしていく「Dev Mode(開発モード)」

文 = 井関庸介

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