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2024.06.11 15:15

出社する意義と、「支持者」の価値 BoxノッテボーンCOOの「仕事論」

2023年11月にBoxの最高執行責任者(COO)に就任したオリビア・ノッテボーン Courtesy of Box

生成AI(人工知能)が急速にビジネスシーンを変える中、企業にとって自社製品・サービスを革新する絶好の機会となっている。米コンテンツ・マネジメント企業「Box(ボックス)」もその一つだ。

コンテンツを管理・作成できる同社のプラットフォームにAIを搭載したことで、顧客は、財務諸表や法務契約書、マーケティング資料などの経営情報に埋もれている「非構造化データ(生成時に加工や処理がされていないデータ)」から価値の高い情報を抽出することができる。

Boxは2023年11月、オリビア・ノッテボーンを最高執行責任者(COO)に迎えた。彼女は、マッキンゼーを経て、グーグルやGoogle Cloudで勤務。Dropbox(ドロップボックス)のCOOを経て、メモアプリのNotion(ノーション)で最高収益責任者(CRO)を務めた経験ももつ。また、米スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得するなど、長くシリコンバレーに身を置いてきた。

オフィスに出勤したほうがいいのはなぜか。メンターよりも、「Advocate(支持者)」を見つけたほうがいい理由とは? 今回、Boxの戦略からポストコロナ時代の働き方のほか、女性として、そして子供をもつ保護者として働くことの楽しさや悩みなど、多岐にわたって話を聞いた。


──Boxと比較的近い時期に創業したDropbox(ドロップボックス)でもCOOを務めていましたね。近年のBoxの成長をどのように見ていますか?

オリビア・ノッテボーン(以下、ノッテボーン):Boxは2015年にIPO(新規株式公開)を果たし、今では売り上げ10億ドルを超える上場企業になりました。そのビジネスの非常に重要な部分が日本にあります。私はBoxには大きなチャンスがあると見ています。

理由の1つ目は、セキュリティの観点から最も堅牢なコンテンツ・クラウドの一つとして評価され続けている点です。顧客が「非構造化データ」というかたちで預けたデータを堅牢かつ適切に管理でき、そして管理者がプラットフォームのガバナンスとセキュリティについて適切な判断を下せる点も信頼につながっています。これは、私がDropboxに在籍していたときにBoxと競合していた点の一つであり、現在もBoxの差別化要因の一つとなっています。

2つ目は、プラットフォームそのものです。インフラやセキュリティ、コンテンツ・サービスのレイヤーに素晴らしい基盤があります。オープン・プラットフォームであり、「API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)第一主義」という理由から、他の多くのアプリとの連携に取り組んでいる点でも差別化されています。

3つ目は、AIです。これは抽象的な意味で申し上げているのではありません。今日、データの90%以上が「非構造化データ」です。Boxのプラットフォームは、この非構造化データにアクセスしやすくするうえ、さまざまなワークフローと統合できます。これをAIと組み合わせることにより、信じられないほど強力な組み合わせが実現するのです。

差別化いう意味では、Boxのプラットフォームは、永世中立国である「スイス」的なレイヤーになり得るのではないでしょうか。つまり、顧客の非構造化データのリポジトリに適用したLLM(大規模言語モデル)が何であろうと、対応できるということです。

LLMに関してはOpenAIからグーグルまで各社が取りそろえており、日本企業も独自のAIモデルを開発しています。その中から、顧客やパートナーが自社に適したモデルを選ぶにはどうすればいいか。Boxにはそれを手助けできるプラットフォームがあります。それこそが私がBoxのCOOに就任した理由であり、今日の市場におけるBoxの立ち位置にワクワクしている理由です。ここ数年間、必要な効率化を推進してきましたが、それが一段落した今、自社の成長に再投資できる素晴らしいポジションにいると考えています。

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文 = 井関庸介

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