スタートアップ

2024.06.24 18:15

“ユニコーン”に戻ったFigmaが描く「製品開発の未来」

20歳の時に共同創業した「Figma(フィグマ)」を率いるディラン・フィールドCEO Kohichi Ogasahara

ちょうどその頃である。彼はブラウン大でエヴァン・ウォレスと出会った。ウォレスは、ブラウザーでグラフィックを間断なく加工できる「WebGL」という描画技術を使い、立体プールに沈む球体を動かしたり、水面に波紋を起こしたりできるデモ作品の「WebGL Water(ウォーター)」を発表していた。それに魅了されたフィールドはウォレスと意気投合し、ウェブ上でデザインする製品・サービスを立ち上げることに決めたのだ。
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それがフィールドのもう一つの資質につながる。「大胆さ」だ。フィールドは2011年、大学中退を条件に2年間にわたり計10万ドルを出資する「ティール・フェローシップ」に応募した。これは、簡易決済サイト「PayPal(ペイパル)」を共同創業したピーター・ティールによる若手起業家育成プログラムで、大学進学の価値をめぐって議論を呼んでいた。応募時はドローン開発を考えていたフィールドだが、「何を作りたいか確信はなかったが、エヴァン・ウォレスと一緒に働きたかったことだけは確かだった」とLinkedinに投稿している。幾多もの面接を経て合格したフィールドは、その資金を元手にウォレスと共にFigmaの開発を進めた。

想像と現実の間の溝をなくす。その実現にあたって、フィールドとウォレスはまず「デザイン」に焦点を当てることにした。二人は、米労働統計局(BLS)のサイトで米国におけるデザイナーの数を確認。当時は約20万人だったという。それだけなら、決して多いとはいえない。これは半ば“賭け”だったとフィールドは明かす。

「計算したところ、ベンチャー投資資金を得るのに必要な収益が立ちそうもありませんでした。そこで、『将来的に変わるだろうか?』という問いを立てたのです。時間と共に市場は広がるのか。私たちの答えは『変わる』でした」
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時同じくして、サーバーやデータウェアハウス(DWH)がオンプレミスからクラウドへ、箱入りパッケージソフトウェアや小売りの実店舗がSaaSやApp Storeへ移行していたのだ。流通やインフラのコストが下がり、同時に、開発者にとってソフトウェア開発は以前よりも容易になり始めていた。こうした潮流を組み合わせると、必然的に価値の差別化要因は開発そのものよりも上流へ移ることを意味していた。

「それなら、これからの企業はどこで競合他社に勝つのか? 最も優れたユーザー体験(UX)、最も優れたデジタル体験(DX)をデザインすることで勝つのです」(フィールド)
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文 = 井関庸介

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