スタートアップ

2024.06.24 18:15

“ユニコーン”に戻ったFigmaが描く「製品開発の未来」

20歳の時に共同創業した「Figma(フィグマ)」を率いるディラン・フィールドCEO Kohichi Ogasahara

FigJam→Figmaデザイン→開発モード→Figmaコミュニティの製品群とマーケットプレース、成長の余地を残す顧客層──。そんなFigmaを買収したいと考える企業があっても不思議ではない。それが冒頭の、2022年9月に発表された、アドビによる約200億ドルでのFigma買収である。
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当時、プロフェッショナルユースを対象とした製品群を抱えるアドビと、ウェブ上で容易に使えるFigmaの合併を脅威と捉える報道もあった。しかし両社の製品は性質が異なるゆえ、ユーザー層や価格帯での観点では直接の競合とは言いにくい。それでも互いのエコシステムを補完し、拡充する可能性はある。それを裏付けるように、2023年2月に米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴する準備を進めているとの報道が出ると、同年12月に両社は合意のもと、合併契約を断念すると発表した。

結局、サブスクリプションモデルで自社製品の売り上げを伸ばすアドビと、オープンなエコシステムを標榜するFigmaの共存は実現せず、「想像」で終わってしまったが、フィールドは将来的なコラボレーションの可能性を否定しない。もちろん、後悔がまったくないわけではない、と本音ものぞかせる。とりわけ、アドビ会長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤンに師事できなかったのが残念だという。

「彼は伝説的なリーダーであり、驚異的なCEOであり、私がメンターとして望んでいた人物です。合併契約を断念すると決めたとき、個人的にいちばん悲しかったのは、シャンタヌをメンターとして迎えられないことでした。彼は素晴らしい人ですからね」(フィールド)
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いずれにせよ、運命は決まった。買収が発表される前年の2021年1月にフィールドはX(旧ツイッター)で、「我々の目的はアドビになることではなく、Figmaになることだ」とツイートしている。紆余曲折ありながら、それは現実になった。FigmaはFigmaになるべく宿命づけられたわけだ。第一、Figmaはウェブとウェブブラウザで生まれ育った製品である。フィールドだって、ウェブが秘めるポテンシャルを信じていたわけだろう? 彼にそう尋ねると、間髪を入れず、かぶせるように“人類学者”らしい答えが返ってきた。

「人と人のコラボレーションが秘める可能性に、ですね」

文 = 井関庸介

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