昨年夏には、ウクライナはケルチ橋を爆破し、損傷させた(編集注:ケルチ橋は2022年10月にも爆破されて損傷している)。ロシア側が橋げたを完全に修復するのには半年かかった。これらに続くのが今回のフェリーターミナル攻撃だった。
このフェリーターミナルは前線からおよそ240km離れており、ATACMSのより新しい型であるM48かM57が使われたことが強く示唆される。M48は射程が270km、M57は300kmあり、いずれも約215kgの単弾頭を搭載する。
M48かM57は、ウクライナが3月に米国から供与された第2弾のATACMS100発あまりか、それ以降の供与分に含まれていたようだ。昨年供与されていた数十発のATACMSはすべて旧型のM39だった。M39は擲弾サイズの子弾を1000個近くばらまくクラスター弾頭を搭載し、射程は165kmにとどまる。
長射程のATACMSはクリミアの飛行場や防空兵器、停泊中の軍艦に大損害を与えている。したがってフェリーにとって深刻な脅威になるのは驚きではない。
とはいえ、フェリーに対する攻撃が現在どれほど重要なのかは疑問だ。ウクライナによる遠距離攻撃作戦の激化を察知したのか、ロシアは昨年夏、ロシア占領下のウクライナ東部と南部のそれぞれの既存の鉄道路線を結ぶ、総延長80kmほどの新たな鉄道路線の建設を加速させた。
ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトはこのルートについて「ロシアから(ウクライナ南部の)マリウポリへの移動や輸送にかかる時間を大幅に短縮する。所要時間は日単位、場合によっては週単位で短縮され、兵站や部隊の移動の効率性が上がる」と解説している。さらに「たとえクリミア橋(ケルチ橋)が破壊されても、この新しい鉄道路線があれば(クリミア)地域への補給は十分賄われる」とみている。
だとすれば、ケルチ海峡のフェリーの輸送量が減っても鉄道で十二分に補えるだろう。