ロシアによるウクライナの都市や基地に対するミサイルやドローン(無人機)での攻撃は、ウクライナ全土で月に数千回にもおよぶ。そのため、ウクライナ軍は地対空ミサイル(SAM)をできるだけ多く必要としている。
新たに公開されたウクライナのSAMシステム「レイブン」は奇妙なもので、余剰のドッグファイト(戦闘機の空中戦)用ミサイルで武装した中型トラックという格好をしている。だが、この変わった構成は意図的なものだ。
英国防省でウクライナ軍への装備の提供を担当する「タスクフォース・キンドレッド」のオリー・トッド海兵隊大佐は、レイブンを「スパキャットHMT600車両と先進的な短距離空対空ミサイル、ASRAAM(アスラーム)を組み合わせた驚くべきシステム」と紹介している。
トッドによれば、レイブンはウクライナにすでに8基送られていて、さらに5基供与される予定だ。レイブンは遅くとも2023年以降、ロシア軍のドローンを撃墜してきたが、公式動画でお披露目されたのはつい最近のことだ。
2022年2月にロシアがウクライナに対する戦争を拡大したあと、ウクライナ軍のレーダーなどのセンサー類や発射機、ミサイルといった装備では、旧ソビエト連邦から引き継いでいたもの、国内で取得したもの、外国から譲渡されたものが混在するようになり、問題になった。それらの間には必ずしも互換性がなかったからだ。レーダー、ミサイル、発射機がそれぞれあっても、レーダーとミサイル、あるいはミサイルと発射機が適合しない場合がある。
英国防省は早くも2022年内に、こうしたばらばらのハードウェアを組み合わせる作業に取りかかった。翌年には米国防総省もそれに続き、フランケンシュタイン博士のつぎはぎの怪物にちなむ、いわゆる「フランケンSAM」をつくる取り組みに着手した。並行してウクライナ国防省も取り組みを進めてきた。
課題は統合、つまり、互換性のないセンサーやミサイル、発射機をひとつのシステムとして機能するようにすることだ。レイブンの場合、英国の技術者らは、退役した英空軍戦闘機からミサイル発射レールを取り外し、スパキャット製軍用トラックに取り付けた。トラックの上部には上下左右に動く簡易的なカメラ台座を搭載し、ビデオゲーム機型コントローラーで操作して、飛来する目標の方向に発射レールと重量約90kgのASRAAMを向ける仕組みになっている。