欧州

2025.05.14 11:00

英国製トラックに空対空ミサイル搭載、ウクライナ軍に新たな「フランケンSAM」出現

軍用トラックと空対空ミサイル発射機などを組み合わせた英国製防空車両「レイブン」(英国防省が公式YouTubeチャンネルで公開した動画より)

軍用トラックと空対空ミサイル発射機などを組み合わせた英国製防空車両「レイブン」(英国防省が公式YouTubeチャンネルで公開した動画より)

ロシアによるウクライナの都市や基地に対するミサイルやドローン(無人機)での攻撃は、ウクライナ全土で月に数千回にもおよぶ。そのため、ウクライナ軍は地対空ミサイル(SAM)をできるだけ多く必要としている。

新たに公開されたウクライナのSAMシステム「レイブン」は奇妙なもので、余剰のドッグファイト(戦闘機の空中戦)用ミサイルで武装した中型トラックという格好をしている。だが、この変わった構成は意図的なものだ。

英国防省でウクライナ軍への装備の提供を担当する「タスクフォース・キンドレッド」のオリー・トッド海兵隊大佐は、レイブンを「スパキャットHMT600車両と先進的な短距離空対空ミサイル、ASRAAM(アスラーム)を組み合わせた驚くべきシステム」と紹介している

トッドによれば、レイブンはウクライナにすでに8基送られていて、さらに5基供与される予定だ。レイブンは遅くとも2023年以降、ロシア軍のドローンを撃墜してきたが、公式動画でお披露目されたのはつい最近のことだ。

2022年2月にロシアがウクライナに対する戦争を拡大したあと、ウクライナ軍のレーダーなどのセンサー類や発射機、ミサイルといった装備では、旧ソビエト連邦から引き継いでいたもの、国内で取得したもの、外国から譲渡されたものが混在するようになり、問題になった。それらの間には必ずしも互換性がなかったからだ。レーダー、ミサイル、発射機がそれぞれあっても、レーダーとミサイル、あるいはミサイルと発射機が適合しない場合がある。

英国防省は早くも2022年内に、こうしたばらばらのハードウェアを組み合わせる作業に取りかかった。翌年には米国防総省もそれに続き、フランケンシュタイン博士のつぎはぎの怪物にちなむ、いわゆる「フランケンSAM」をつくる取り組みに着手した。並行してウクライナ国防省も取り組みを進めてきた。

課題は統合、つまり、互換性のないセンサーやミサイル、発射機をひとつのシステムとして機能するようにすることだ。レイブンの場合、英国の技術者らは、退役した英空軍戦闘機からミサイル発射レールを取り外し、スパキャット製軍用トラックに取り付けた。トラックの上部には上下左右に動く簡易的なカメラ台座を搭載し、ビデオゲーム機型コントローラーで操作して、飛来する目標の方向に発射レールと重量約90kgのASRAAMを向ける仕組みになっている。

次ページ > ウクライナ軍にはフランケンSAMが何種類もあるが欠点も

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事